217:どこか遠くへ行きたい

コロナ影響にへきえき、うんざり

どこか遠くへ行きたい

 コロナ関連じゃない話を書きたい、と思っている。これを書くにあたり最近の出来事を探すと、大概がコロナがらみになってしまう。確か、1年前からここに「コロナ以外のことを書かなくても済む時がいつになることだろう」と書いた記憶がある。しかしなかなかなくならないうちに、コロナ影響のことを書くのにへきえきしてきた。
 普通の日常の何気ないことを書きたい。しかし前回に書いた3月20日開催予定の「海からの視点・粟島オンラインツアー」は、東京が21日までの緊急事態宣言の延長のために私自身が島に行けなくなり、現地に行くのは配信チームだけになってしまった。私はオンラインで島を案内する…。
「とうほくのこよみのよぶね」という岐阜の仲間たちと一緒にやってきている復興行事も、東京からの私は参加できなくなってしまった。と果てしなくコロナの話が出てくる。1年前は、1年も続くなんて思ってはいなかった。2021年という年に、2020東京オリンピックというタイトル名が持ち越されている。「いまだ2020年なのか」と思う時がある。令和3年という年号にも、慣れたような実感があまりない。どこかで自分の中で時間の流れを止めようとしているのか…。
 スマホで写真を撮る枚数が激変した。盛んに移動していた時期、人と会っていた時期は、その都度撮りたくなる場面、風景がありバシバシ撮っていたが、今は出来事がパソコン画面の中で起こるのが日常になり、それ以外はルーティンになっている。スマホの写真を見返しながら時間を振り返る行為をよくしていた時期があったが、今はそれがない。しようがない。 
 今年度、海外へは1度も行かなかった。これは初めて海外旅行をした21歳の時以来、初めてじゃないだろうか。私だけでなく、みんな動かなくなった。きっと人類が地球上で移動をし始めてから、全地球上の人口が動く総距離は絶えず増え続けていたに違いない(人も増え、移動手段も進化してきたから)。しかし今年度、初めてその数値は何百万年ぶりに減ったことだろう。これってすごい気づきじゃない?
 大陸を横断する飛行機の便数が減っただけでなく、陸上の移動距離も減っている。ステイホームで歩数も減っている。しかし人は動きたくなる。今以上に総移動距離を減らすのは、もう無理だと思う。私の人生で最も移動距離の少なかった年は、生まれてからの1年であった。それからハイハイができるようになり、歩けるようになり、一人で行動できるようになり、その距離を伸ばし続けてきたが、ここにきてその成長は止まり、一気に下降に転じた。しかし、もう下げ止まりである。もう減らしようがない。
 「どこか遠くへ行きたい」

(アーティスト)