ALL TOGETHER NOW |
この秋に東京上野の寛永寺で作品を展示する機会がありました。上野にはもう何年も通っているのですが、まだまだ未知の場所がいくつもあります。今回あらためてお寺の歴史などを調べて制作した作品「タイトル:ALL TOGETER NOW」について解説したテキストをここで紹介します。
〈Voice of the work〉
みんな一緒に集まろう。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15。箱に入れば何処へでも行ける(Logistics network)。あなたが箱に入れば、箱は細胞分裂し始める(Cell division)。なんかあなたに似てきたようだ(heredity)。
1、2、3、6、7、9、12、14、15。ここに来てくれてありがとう。これで、みんなが集まった。想い出話を語り合おう。時を超えて語り合おう。未来について君と語り合おう(dialogue of the heart)。ALL TOGETHER NOW。
〈解説〉
徳川家15人の将軍のうち、上野寛永寺にお墓があるのは6人で、他の9人は宗派の違いや自信の意思により、他の場所に埋葬されている。ALL TOGETHER NOW は、その9人が上野寛永寺にやって来て、15人が一緒になり、互いの想い出を語り、更に来訪者と未来について対話する物語を表現している。庭に設置されている9つの立体作品は、9人の寛永寺には埋葬されていない将軍なのでしょうか。
作品は段ボール箱(430㎜×465㎜×625㎜、ダブルフルート/8㎜)をベースにして作られており、1つの箱を切り込みと折り曲げの行為のみで造形されている。切り落としたり、他の段ボールを加えたりはしていない。形態の固定は凧糸(8号/1.3m)で留めてあるだけで、接着剤は使用していない。
この集まり(展覧会)の終了後には、留めてあった凧糸は解かれ、切り目、折り目は元に戻され、段ボール箱が折り畳まれた元の状態になり、再び組み立てられる(集まりがある)日に備える。段ボール箱は物流ネットワーク(Logistics network)をイメージさせるアイコンとして用いられている。
※庭の奥に組み立てられていない段ボール箱が6枚重ねられている。これは寛永寺に埋葬されていて、ここに移動する必要がない六人がすでにこの場所にいることを意味している。
〈補足説明〉
庭の左に位置するお堂は渋沢栄一が建立した渋沢家霊堂である。渋沢栄一は、15代将軍慶喜と共に幕末から明治にかけて日本を近代国家へと動かし、資本主義の礎を推進した人物である。今回の作品制作のアイデアのきっかけとして、この霊堂の存在も欠かせない。日比野が作品制作で日頃から使用している段ボール箱を資本主義の要とも言える物流ネットワークのシンボルとした発想には日本資本主義の父渋沢栄一の存在があるといえる。
〈エピソード〉
庭には亀の置物がある。亀の背後には亀を守る為の竹の柵がある。日比野が作品を作り終えて、九体の作品の最終的な位置の調整をしている時に、この柵を移動したら全体感がどの様にかわるかを見てみたいと、日比野が少し移動させようと柵を動かした瞬間、風もないのに、庭の真ん中にある作品が小石の上を滑るように1尺程渋沢家霊堂の方に動いた。
この亀は寛永寺根本中堂の屋根に魔除火除として設置されていたもので、昔から寛永寺を見守ってきた長寿の亀であることを後に知り、以後、柵も亀と共にそのまま展示されることになった。
(アーティスト)