246:小値賀島となでしこ

 

野崎島の野首教会

小値賀島となでしこ

 

 「し」に濁音で「じ」、「ち」に濁音で「ぢ」。キーボードではJIとDI。普段よく使うのは、「じ」が多い。じかん、じしん、じまん、じょうげ…。「ぢ」を使うのはあまりないけれど、先日、長崎県の小値賀島の人と話していて、小値賀と打とうとしても雄鹿が出てくると言った時に「小値賀の値は『ぢ』です」と言われ、小値賀の印象が一層特徴つけられた。
 小値賀から船に乗ったのが午前10時55分、野崎島の不思議な王位石を見ながら宇佐島経由で上五島の赤波江教会を船から見ながら、捕鯨で栄えた有川港に寄って佐世保港に着いたのは午後零時40分。バスターミナルから西肥バスで長崎空港へ行くには15分後の出発で、予約しておいた佐世保バーガーをピックアップし、切符を買ってバスに乗る。この辺りの土地勘は全くなく、長崎県の地形の複雑さを体感しながら、初めて来た土地の知識が知恵になる(地図で見ていた場所に実際に行く)経験をする。バスから見えてくる大村湾の風景や突然現れたハウステンボスに驚きながらの移動だった。
 コンビニ、車販売屋さん、高齢者ケアセンターが定番のように日本中にある。空港に着いてバスの運転手さんに切符を出す時に、間違えて往復切符を買ったことに気がつく。運転手さんは、ちょっと複雑な払戻しの手配を優しく対応してくれる。この辺りは東京には絶対に有り得ない感じがした。長崎空港発午後4時25分の飛行機に乗る前に、運転手さんが一度バスをターミナルに回してから、再び空港に現れて「よかったです!」と再会を喜び合って、無事任務完了。帰途に着く。
 この日は女子ワールドカップの日本対ノルウェーの試合が午後5時キックオフであり、搭乗してから機内Wi-Fiを使ってスマホで観戦。熊本市現代美術館ではマッチフラッグを作っているとメールが入る。機体は離陸し、国際都市の先駆けとなった長崎上空を旋回する。晴れ渡る空は大きな地球の一部を垣間見せてくれている。
 宇部上空で日本が先制ゴール!ミドルシュートが相手ディフェンダーのクリアミスによりキーパーの反応が逆になり、いい感じ! 攻め続けているなでしこジャパン! 窓からは見慣れた瀬戸内の島々が見えてきた。私が毎年通っている香川県の粟島がくっきり見える。「来週粟島には行く予定」と思っていた時に、同点ゴールが生まれてしまった。紀伊半島で前半終了。神奈川上空で後半開始! 東京湾に入り日本が二点目ゴール! 羽田空港混雑のため着陸が遅れそう。
 陽は傾き、埋立地の四角い人工島が複雑な長崎や瀬戸内の島々と対照的である。四角いピッチの中で複雑に動き回るなでしこの選手達。相手国・ノルウェーの海岸線も複雑であろう。学校でフィヨルドは習ったけれど行ったことはない。
 着陸態勢に入って機内Wi-Fiが切れたので、この原稿もおしまいにします。さて試合はどうなったのだろうか…。2023年8月5日午後6時18分。
                                     (アーティスト)

 【訂正】前回の「藝大You Tube」の原稿で「指揮科は学部1年から4年と大学院の1、2年合わせても学生数は約110名しかいません」とあるのは「約10名」の誤りでした。日々の新聞による編集上のミスです。お詫びして訂正します。