TRTCHK |
「動いていないように見える雲は、動いているように見えないけれどいつか無くなる。動いていないように見える建物は、動いていないようにしか見えないけれど、いつか無くなる」というフレーズを自分のスマホのメモに書き残してある。
この言葉が出てくるまでには、一体何があったかは言葉では書き留めてはいない。何かがあったことはきちんと記憶には残ってはいないけれども、なんとなく身体的には、その言葉の元の「地鳴りのような冷ややかな血汐の超波数の長い響き」の感覚はある。この「地鳴りのような冷ややかな血汐の超波数の長い響き」を「地冷血超波響(TRTCHK)」と名づけて、この話の先を進めよう。
もし「地冷血超波響」を記し留めて、それを再現したり、検証したりできる道具、手段、機器、アプリがあれば、私たちのコミュニケーションはかなり変わってくるのだろうと思う。言霊とも異なるこの「地冷血超波響(TRTCHK)」は、あえて言葉で表すとすると、叫びのような類のものであろう。
「あーーーーーー」というあの声! 体の震えが、体の中にある空気を響かせ、口から出てきてしまう、あの「あーーーーーーー」である。私が「あーーーーー」と言い、相手が「あーーー」と共感する。それがずーと続くというコミュニケーション。それで成り立つという世界は、進化してしまう文明の視点から見えている原始的な進化という垂直方向、縦方向の成長の方法ではなく、水平方向、横つながり方向の、成長するという広がりのようなもの…。
空気が薄ければ薄いほど透明感は増す。しかし空気がなければ響かないから声は聞こえない…。どこまでも澄み切っている世界での「地冷血超波響(TRTCHK)」の「あーーー」は誰にも聞こえないのかもしれない。
(アーティスト)