254:能登学舎

 

能登学舎

 

 能登震災後の社会地域作りの課題に対して東京藝大と金沢大学とが連携して、長期的に取り組むことになりました。拠点となるのは、珠洲市にある能登学舎(旧小泊小学校)。ここは、金沢大学が地域の特性を活かして人材育成する機関です。4月7日に私は震災後初めて現地入りし、金沢大学、珠洲市の関係者、地域の人たちとの会話からスタートしました。
 能登学舎は現在1次避難所になっており、20名ほどの方がここで生活しています。校庭には仮設住宅の建設が始まり、地元の方が入るのか、地元とは関係なく全壊認定の方が優先的に入るのかは未定のようでした。
 否応なく新たな住居での生活が新緑の季節とともに始まるタイミングで、今回私が持参したのは「明後日朝顔の種」。能登学舎に避難されている方々に玄関口で、「朝顔を一緒に育てませんか」と自己紹介もほどほどに種を渡しながら「この種はお花屋さんで売っている種とは違って、日本全国いろいろな地域で採れた種で、その地域同士が朝顔でつながっている種なんです」と2003年から21年間続けていて、現在29地域で展開している「明後日朝顔プロジェクト」をなるべく簡潔に話をしました。
 すると、「へー」という不思議そうな予想通りの反応と、「仮設住宅でやったらいいんじゃないか」「いいわね」と受け入れてもらえそうなリアクションがありました。さすが朝顔です! そんな感じで、この地域で被災されている方々にも種を配っていこうと、明後日朝顔の看板作りを始めました。地元の方々がダンボールとかマジックとかガムテープを準備してくれて、看板が完成しました。
 さてさて能登での明後日朝顔の物語の始まりです。2007年に金沢21世紀美術館で本格的にアートプロジェクトとして進化した明後日朝顔は、再び北陸の地で新たな役割を担っていきそうな予感がしています。


                                     (アーティスト)