ニューミュージアム |
ニューヨークのダウンタウンに位置するニューミュージアムが企画する「ニュー・インク」はアーティストの育成プログラムです。ニューミュージアムができたのは今から約50年前の1977年でした。その頃はミュージアムと言えば、メトロポリタンミュージアム、ニューヨーク近代美術館、グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館など、アップタウンにしかなく、これらの美術館では評価のついた作家たちの作品が収蔵され、展示されていました。ダウンタウンには、今生きている作家たちの作品を主に扱っているギャラリーはありましたが、ミュージアムはありませんでした。
そんな状況の中、まだ大きな注目や評価を得ていないアーティストによる新しいアートや新しいアイデアを紹介することを目的として設立されたのが、ニューミュージアムです。ニューミュージアムのコンセプトは「ニューアート・ニューアイディア」で、美術館の堅苦しい制度化に挑戦するという使命を担っています。そしてアート界に新しいアイデアをもたらし、社会の人々とつながり続け、アートによって社会を変革させていくのがミッションです。
「ニュー・インク」は今年で10年目を迎え、「ソーシャル・アーキテクチャ」「クリエイティブサイエンス」「アートアンドコード」「コーポラティブスタディーズ」「エックステンディッドリアリティー」という5つの領域が2024年に設けられました。それぞれに新人アーティストがエントリーして選抜され、制作活動を支援する体制が1年を通してとられています。その成果発表の場である「デモフェスティバル」は6月に開かれ、アーティストたちの作品展示とプレゼンテーションが行われます。すべてのプログラムは民間企業によって支えられていて、アートを支援することで社会が豊かになり、その効果を企業は支援しているということになります。
ニューミュージアムは来年にはさらに活動を推進する支援を受け、現在の倍の面積の展示室が出来上がる予定です。そして「ニュー・インク」自体もこれまで一プログラムから独立した組織体制となり、様々な団体とより一層繋がり、ニューアート、ニューアイディアをさらに実践していくことが期待されています。
(アーティスト)