260:自分とは何か

 

自分とは何か

 

 「自分とは何かを考える」というテーマで連続してワークショップを開催している。年に2回、今年で4年目になる。参加者は年齢問わず毎回30人。内容は4年を振り返りながら、だいたいその日の朝に布団の中で考える。朝、布団の中で「自分とは何か?」を自分に対して考えると布団からは出てこられなくなるが、30人と一緒になって考えるワークショップのことを考えるとなると、割と心地よくワクワクしながら目が覚めるのである。
 10月のある日もそんな感じで1日が始まった。今日使用する会場と前回の使い残しの材料は何があるのか、とかを担当者に電話で確認して、1日のいろいろな活動をしながら考える。アートを中高生に体験してもらう空間つくり」「アートと企業をつなぐ課題」「美術館の役割」「リカレント教育と大学」「研究活動支援の体制」「サイバーセキュリティーについて」「大学間連携」「海洋環境課題とアート」などなど、1日があっという間に過ぎていく。
 ワークショップの開始時間は午後6時。車を運転しながら会場に向かう。スカイツリーが真正面に見えてきた。「でかい!」。信号待ちをしながら、隣の白い車の農家風の陽に焼けた男性がハンズフリーで電話をしている会話が聞こえてきた。「週末は雨になるからバーベキューの予定をどうしようか」…。
 会場に到着してスタッフにお願いして、長机を向かい合わせに2つ繋げて、15の島を用意した。参加者が入ってきた。「自由にそれぞれの島に二人ずつ向かい合って座ってください」。今日のワークショップのタイトルは「他者診断25乗」。ペアを交代しながら互いの印象を紙に書いて渡す。これを25回繰り返す。その都度、私からテーマを出した。
 「向かい合った人=Pを食べ物で例えると何?」「Pの印象を俳句にしてみて」「Pの両親の名前はなんだろう?」「Pが有名人に生まれ変わるとしたら?」「Pが自分の部屋に大切にあるものは何?」「Pが宇宙人だとしたらどんな言葉を喋る?」。Pは自分の診断書を持って島を巡り、新たな他者との出会いを繰り返しながら、自分の診断書には他者診断のコメント、イラストなどが記されていく。
 私は会場をウロウロしながらみんなの診断をときおり大きな声で読み上げたり、感心したり、驚いたり、大笑いしたり、違う話に脱線したり、質問したり、そんなことをしながら次のテーマを考えては、テーマを出していた。
 予定していた時間内には12回で時間切れになり終了いたしました。次はテーマを考えては、テーマを出していた。次は何をやろうかな。

  

                                     (アーティスト)