265:インドネシアにて

 

インドネシアにて

 2月末にインドネシアに久しぶりに行ってきました。私がインドネシアに最初に行ったのは1997年に東海テレビ開局40周年番組でスマトラの離島の森に住む部族の暮らしぶりの取材でした。あれから28年経ち…、今回の目的はインドネシアの芸術大学と民間のアートスクールの視察と交流。近年東南アジア、特にインドネシアの現代アートが注目されています。
 アジアが持っている精神性、習慣は西洋のそれとは異なります。アート界の文脈の主流は西洋がリーダーとなり始まりましたが、多様性を求める時代になり、グローバルサウス、ダイバーシティなどのキーワードが日常となる流れの中から、インドネシアの立ち位置が浮かび上がってきました。
 インドネシアには17000の島があり、300の部族、言語は公用語のインドネシア語とは別にジャワ語、スンダ語、マドゥラ語、ミナンカバウ語などがあります。そして仏教、ヒンズー教国が多いアジアの中では、国民の9割がイスラム教徒という国で、植民地、占領地、政権下を経てきました。
 インドネシアの独立記念日は1945年8月17日。人口は2・8億人で、平均年齢が日本より20歳若い29歳、若々しい国です。そんな環境の中で生まれてきたアートシーンが今回の視察の目的で、その中で注目すべきアート集団(アートコレクティブ)がルアンルパ(ruangrupa)という名のチームです。ルアンルパと別のコレクティブの二つ(SerrumとGrafisHuruHara)が共同して展開しているグッドスクール(GUDSKUL)という教育プログラムがあります。これは理論よりも経験をベースに学習するというもので、そこには11のサブジェクトがあります。
 ①ワークショップ②アーティキュレーションとキュレーション③地域社会/コミュニティーとの関係④空間的実践⑤知識の庭⑥クロスメディア⑦グループ文化論⑧アートコレクティブ ラボ⑨アートコレクティブの実践で得た知識⑩アートコレクティブ概観⑪コレクティブの持続可能な戦略。3日間かけて詳しくミーティングをした後に、私が29年前にスマトラの離島の森の部族の村に1週間かけて訪ねた時の話をし、当時の映像を見てもらいました。ぜひ、次回はこの島に一緒に行こうとなりました。
 「その映像に写っていた子供達はもう大人になっているね」。次に日本でインドネシアで何かが始まりそうな、今回の視察でした。

  

                                     (アーティスト)