

| 心の防災グッズ |
熊本市現代美術館で、東京藝術大学の社会人履修プログラムが2月5日に行われた。対象は熊本市役所の職員の方々。通年で行っているもので、この日のテーマは「心の防災グッズ」。熊本では今年で地震から10年の節目を迎える。参加者たちに事前に、地震があったときに、復興支援活動とか避難生活をする中で、あなたの心の支えになったものなどを持ってきてください、と課題を出した。当日集まった15人の参加者に、その物について1人ずつ、エピソードなど話をしてもらった。
パンダの赤ちゃんのぬいぐるみ、息子からもらったスノードーム、メモノート、ヘッドセット、などなど。このプログラムの目的は「ライフラインとしてのアート」を伝える展覧会を開催して、来場者に日常での文化の大切さを実感し、それを常日頃から実行することが、非日常時になった時の生活にとってとても重要なことである、ということを発信することである。物だけを展示してはそこが伝わりにくいので、エピソードをテキストにして物と一緒に見せることとした。いかにその物に物語があるかということがポイントである。
話を聞いて人に伝えるときの特徴として、いくばくかの聞いた人自身の思いが入り、他者に伝わっていく。それこそが、生きた伝承と捉え、こころの声であると捉える。今回のプログラムでは、その点を強調する手法を取ることとした。
やり方としては、1人の方のエピソードを残りの14人が聞き、自身がその物の持ち主となり、その物についての説明文を書いてもらう。そこには自身の思い入れや、きっとこうだろう、とか、こうあってほしいなどの事柄を付加しても構わないとした。そして集まった14人分のテキストをAIを使って、1200字にまとめてもらい、それをキャプションとして、美術館の展示台に物と一緒に掲示をする。参加者たちと一緒に持ち寄った物を改めて「心の防災グッズの作品展の作品」として対峙したときに、心の防災グッズとはこのような物たちなのだなと、その輪郭を客観的になぞることとなる。自身にとってはなにげない物、当たり前の物を他者と共有することで、見逃しがちなことを価値化することが出来そうになった、とみんなで体感できたプログラムとなった。
この作品が展示される展覧会「熊本地震から10年―私の心が動きはじめたとき」は熊本市現代美術館で3月20日から6月14日まで開催いたします。熊本にお越しの際は是非お立ち寄りください。
(アーティスト)
