編集室から

大須賀瑞夫さんのこと 527号

 新聞発行に追われていると資料がどんどん貯まっていく。それで年末年始の休みを使って片づけていたら、預かっていた原稿が出てきた。「吉岡良太夫の生涯」。江戸末期に現在の矢祭町の豪農の家に生まれて幕臣として活躍し、維新の混乱で新政府に斬首された人物の物語だった。記憶を辿り、「久之浜通信」を発行していた村岡寛さん(故人)から預かっていたことを思い出した。
 著者は毎日新聞の政治記者として活躍した久之浜出身の大須賀瑞夫さんで、「紙面を読んで」の執筆者、里見脩さん(元時事通信の政治記者)とも深い交流があったという。本を何冊か出していて、出色なのは昭和のフィクサー、田中清玄をインタビューした自伝と自らの取材をもとにした評伝。ともに力作で、大須賀さんにとって清玄を書くことはライフワークだったのだろう。
 大須賀さんは昭和18年に久之浜で生まれ、磐城高校から早稲田大学の政治経済学部に進んで記者になった。「久之浜通信」の創刊号と20号にも原稿を寄せていて、故郷への思いを感傷に流されずに忌憚なくズバッと書いている。これをきっかけに大須賀さんのことを調べてみようと思っている。

(編集人 安竜昌弘)

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