436号

 編集室から436号 

 トリチウムを含む汚染水の海洋放出が決まりました。小委員会が「海洋放出が望ましい」と方向づけた時点で、「あとは具体的なスケジュールをどうするのか」という既定路線が明白でした。一連の動きや対応は、シナリオに沿って行われていると思います。でも、これで引き下がっていいのでしょうか。これは他人事ではありません。
 一番は、海に流される液体の正体をきちんと知るということです。「水で薄めて基準値より低くして流す」「通常の原発からもトリチウムは出ている」…。でも現実は、溶け落ちた核燃料に直接触れた水であること、トリチウム以外の物質も含まれていること、肝心のトリチウムという物質が本当に人体にさほど影響がないのかが、よくわからないことなど、心配の種がたくさんあります。勉強が必要です。
 実際に流すまでには、あと2年あります。流されてしまったら、あとの祭りになってしまいます。今回の特集を読み、この問題を考えてみてください。
 詩人の若松丈太郎さんが21日、腹膜播種のため亡くなりました。85歳でした。南相馬市で暮らしながら、戦争や核、原発に対して「ノー」の姿勢を貫き通しました。何回か会っているのですが、印象深いのは、穏やかさのなかに隠し持つ静かな反骨です。それが、詩や文章を書くうえでの原動力でした。3月に出した『夷俘の叛逆』が最後の著作になりました。心からご冥福をお祈りします。

(編集人 安竜昌弘)

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