駿河台での白秋と竣介 | 453号 |
ニコライ堂この夜揺りかへり鳴る鐘の
大きあり小さきあり小さきあり大きあり
北原白秋の短歌です。糖尿病と腎臓病でほとんど目が見えなくなった白秋は1937年(昭和12)11月、神田駿河台の杏雲堂病院に入院します。近くにはニコライ堂があり、病室で聞こえる鐘の音を詠いました。その心境が鐘の音に投影されています。白秋はその5年後の1942年3月からも杏雲堂病院で療養していて、その年の12月2日に自宅で亡くなりました。57歳でした。
ニコライ堂は、松本竣介が好んで描いたモチーフです。しかも、その時期がほぼ重なり合っています。視力を失った白秋の鐘の歌と耳が聞こえなかった竣介の静謐な画面。二人の心の内を思うと感慨深いものがあります。
(編集人 安竜昌弘)
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