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 紙面を読んで From Ombudsman542 

 

画・松本 令子

 

 安斉 タツ子

 「日々の新聞」が配達されると1ページのテーマと写真から想像される紙面の内容を予想してみます。「家のはなし」は、わが家と重ねてみました。障子戸、床の間など日本家屋の良さに包まれ48年目を迎えていました。
 「ストリートオルガン」は「日々の新聞」の中でとりわけお気に入りの文章です。いわば深呼吸の場所です。「詩とメルヘン」のことでは時代背景など理路整然と述べられていました。私も会津在住の折、その創刊号を買い、何度も夢を追いつつ読んでいたものです。
 「あの日あの時」は「日々の新聞」がいつも忘れず、あの日以来続く思いを発信してくれる記事です。福島で第一原発事故の起きた年の3月11日は日本の原子力核災害の元年になりました。「日々の新聞」は今回も、形を変えて追跡してくれています。
 私は「みちのく春秋」という東北六県を対象とした季刊誌に10年間ペンを取りました。「福島に生まれフクシマで生きる」がテーマでした。3カ月間の避難を千葉県茂原市で過ごしました。これを機会に三男の家族5人は、千葉移住を決めました。2歳、3歳、5歳の3人の子供はきれいな空気の下で育てたいという三男の希望だったからです。
 私も「みちのく春秋」に各号4ページ×39回ですから156ページもペンを走らせました。これらを1冊の本として出版しました。その紙面には、原発事故以後の父母、子、孫、友人、知人の記録写真を一枚ずつ載せました。巨大な自然がちっぽけな人間存在を自覚させるように、みちのく、フクシマの苦悩に満ちた姿とそれを乗り越えようとする姿を克明に記録しました。
 「日々の新聞」は、芯を通している新聞でありながら文化、芸術など人が生きるオアシスのような紙面もあり、緊張と余裕のある新聞になっています。これからも百年後の人々に評価される「日々の新聞」を編集し続けて欲しいとエールを送ります。

 (宮沢賢治学会会員・いわき賢治の会事務局)



 

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