| 紙面を読んで From Ombudsman | 554号 |

岡崎 佳子
3月のある土曜の昼下がり。私が乗った電車の車両にはお子さん連れがたくさん乗り込んできました。ベビーカーに乗せられてスヤスヤ眠っている赤ちゃん。ベビーカーより抱っこがいいとばかりに、お母さんの胸にしがみつきながらつり革に手を伸ばしている赤ちゃん。抱っこしているお父さんお母さん同士は背中を向けているけれど抱っこされている赤ちゃんたちは、不思議そうにお互いの顔を見つめ合っていたりして。花粉症対策でつけているマスクの下、思わず顔がほころんでしまいました。
降りてゆく赤ちゃんたちにそっと小さく手を振って、久々に赤ちゃんに遭遇したなぁなんてにやけてた時、ふと浮かんだ「おなまえ かいて」という詩。SNSや今年の灘中の入試問題に取り上げられていたのでご存知の方もたくさんいらっしゃると思います。爆弾が降ってくるガザの日常の中で、身体が吹き飛ばされても私とわかるように、番号ではなくちゃんと私には名前がある、だから私の体に名前を書いて、と実話をもとに書かれた詩。さっき私がバイバイしたあの子たちが、ガザでは本当に体が吹き飛ばされてばらばらになっているんだ…鼻の奥がツーンとしてきて、思わずマスクを上に引き上げたのでした。
さて、この日私が向かったのは、銀座のゆう画廊。鈴木邦弘さんの個展「みえない放射能を描く2026」。おじさん(ご自身?)と相棒のワンちゃんが原発事故で帰れなくなった町を歩き訪ねている絵の数々。ギャラリーの壁にはそれぞれの絵がどの地域のことなのかわかるように、絵の番号がふられた地図も貼られていました。
そしてプロフィールの最後には「タルホピクニックにも参加」の一行が! 前日、お見えになってミニライブをされたという、あがた森魚さんが主宰している「タルホピクニック」、毎回老若男女が思い思いの楽器や自分の声を持ち寄って飛鳥山公園を練り歩く音楽集会、とでもいいましょうか。私も去年参加していたものだから、勝手に親近感を抱き少しお話をしてきました。「政治、原発と聞いた だけで拒否反応を示す人たちにこそ届けたい、知ってほしい。だからイラストとか絵本とか音楽とか、とっつきやすそうなアプローチを考えている」のだそうです。
「日々の新聞」550・551・552号は、第1面に「戦争」の文字。この2文字があまりにもリアルになりつつあり身がすくんでしまいますが、「戦争をしないために一日一日がある」という553号の小野浩さんのおはなし、また国際シンポジウムでの「自分の力を信じて、明日からまたできることを」という武藤類子さんの言葉を何度も口に出して、正気を保っていこうと思います。
(看護師向け季刊誌編集者・自称パートタイマーシンガーソングライター)
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