川本三郎

川本三郎さんのはなし
 
人物紹介を面白く読む
 安竜昌弘さんに「日々の新聞」を送っていただいている。毎号、楽しく読んでいる。いわき市には、昔、小名浜に行ったことがあるくらいで町のことをほとんど知らないのだが、「日々の新聞」を読んでいるので、なんだか隣の町のように思える。
 記事では、人物紹介を面白く読む。
 映画「フラガール」で一躍有名になった、かつての常磐ハワイアンセンターで働いていた女性たちや、最近では、八十歳を過ぎても写真を撮り続け、写真展を開いた女性の記事が印象に残っている。
 市井に生きる元気な女性たちの姿に触れると、こちらも勇気づけられる。
 東京の人間が、地方都市の暮らしを羨ましく思うことのひとつに、住宅事情がある。東京では狭い家に住まざるを得ないが、地方都市では東京に比べ、ゆとりがある。
 「日々の新聞」には、時折り、住まい拝見の記事が載る。皆さん、実にいい家に住んでいて羨ましくなる。これからも、個性的な家、古い家、広い家を紹介して、羨ましがらせてほしい。
 「夕張問題」に端的にあらわれているように、地方都市はいま厳しい状況に置かれている。「日々の新聞」からも、それは伝わってくる。とくに高齢化が進むなか、医療問題は深刻だろう。この問題を、なんらかの形で継続的に取り組んでいってほしい。
 最近、岩波新書から出た、本間義人『地域再生の条件』を面白く読んだ。そのなかに、元気のいい町がいくつか紹介されている。ひとつ気がついたことがある。
 昔の町並みを再現させた会津若松市、昔ながらの林業を再生させた山形県の金山町、昔からの運河をよみがえらせた小樽市。どこも「昔」を大事にした。では、いわき市にとっての「昔」はなんなのだろう。
 地域再生に成功した町は、どこも自助努力が大きかったという。だから著者はいう。「つまり国に頼っていてはダメということです」。
 その意味で、矢祭町長のインタヴューはとても面白かった。
(評論家)