

母の思いと視点 |
7月19日から10月5日まで、日比野克彦個展を水戸芸術館現代美術センターで開催中です。みなさん見に来て下さい。展覧会のタイトルは「一人橋の上に立ってから、誰かと船を繰り出すまで」。幼少期の作品から、20代の段ボール作品、そして現在も続いているアートプロジェクトの活動を、竹久侑キュレーターの独自の視点で組み立てられている展覧会です。
過去に行ったこれまでの展覧会では、私の作品の中から代表作品を私の視点でセレクトしたものを中心にして担当学芸員と作り上げていくパターンが多かったのですが、今回は全く異なるやり方になりました。私だったら絶対選ばない作品が多く入っています。その中でも特徴的なのが、私の母の手作りクッション(生地は私がデザインしたTシャツ)です。竹久さんはこれらを「お母さんキュレーション」と呼んでいます。
一般的に母親は自身の子供の描いた作品などをとっておく事がよくあるかと思います。図工の時間に書いた絵などをコレクションしがちです(採集的にはどこかで失くしたり、処分しますが…)。私の場合、小学生の頃の延長線上で、私が大学生の頃の作品、作家として活動を始めた作品(広告とか雑誌の表紙とかなどの作品は、撮影が終わると、現物の作品は作家の元に返却され、それが私の場合は実家に送られていきました)もコレクションされ続け、母親がそれらを管理し、時折加工したりして活用していたということなのです。
その点を自身が母親でもある竹久さんが目をつけた展示になっています。また、母親のみならず、私の周にいた方々の話なども取り上げ、作品と共に紹介しています。またさまざまなエピソードも手書きで書き込んである壮大な年表(全長30m)も、見ものです。展覧会が始まる前に現場で3日かけて書きました。
アートプロジェクトなどは出来事としての作品なので、物を展示するのではなく、その話を絵本と漫画にした状態で知ってもらう工夫もしています。そんな作家を知る上で新しい取り組みが多くある展覧会になっています。これまでの日比野の展覧会とは違った日比野が見えてくるかもしれません。ぜひ、お待ちしています。
(アーティスト)