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祭りと新年度

 私が生まれたのは岐阜市矢島町。この住所は岐阜城のある金華山(稲葉山)の麓にある伊奈波神社の参道に位置する所で、毎年四月にこのお宮さんの宵宮祭りがあります。8つに区分された氏子地域が持ち回りで山車を挽き、各町内を練り歩きます。今年は矢島町が含まれる地域が8年ぶりに番が回ってきました。私は日頃は矢島町にはいないのですが、生まれた場所ということで毎回、町内の世話係から声をかけてもらい、祭りには参加しています。
 4月4日の宵宮本番! 宵宮の見せ場は夜に提灯をともしての運行です。そのために町内では今年は100個の提灯を新調しました。しかし、なんと4日は大雨となり、中止になってしまいました。新しい提灯はお披露目できずに、来年の当番町に託すこととなりました。世話人たちは8年越しの楽しみにしていた祭りが…、なんとも悔しい夜となってしまいました。
 翌日の4月5日は前日と打って変わって晴天! 山車を伊奈波神社に納車する行事が午前中にあり、私も町内のみんなと揃いの法被を着て集まりました。8年前のこの行事を思い出しながら練り歩きました。山車は私が通っていた明照寺の明照幼稚園とか、矢島町の家の前とかを通り、60年前にここに住んでいた頃のことを想像しながら、わかりやすく故郷を感じながらのひと時でした。
 さてさて次の8年後はどうしているのだろうか? という感慨に浸りながら祭りが終わった昼過ぎに、世話役の家の玄関先で着替えさせてもらって、岐阜県美術館に向かいました。新年度、美術館のスタッフも一部、新しい体制になりました。私の気持ちも伊奈波神社の山車に清められ、美術館の館長としての新年度挨拶です。美術館もいつもとは少し違って見えたのは気のせいでしょうか…。
 宵宮での提灯山車体験は逃しましたが、神社の祭りからの美術館への自身の身の運行は、8年に一回の貴重な体験となりました。

                                    (アーティスト)