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深い悲しみと無念さ | 555号 |
わが店に売られし
おもちゃのショベルカー
大きくなりてわが店壊す
震災の年の2月中旬、「小さな旅」の取材で浪江町を訪ねた。いわきから車で1時間半。請戸漁港も大堀相馬焼の里も商店街も健在だった。そのとき、三原由起子さんの実家、「乗り物センター三原」を訪ねた。自転車屋とおもちゃ屋の複合店。アナログでレトロだった。請戸で美容院を営む、旧知の渡辺潤也さんの店にも顔を出して歓談した。
それからひと月も経たないうちに震災と原発事故が起こり、浪江は壊滅的な被害を受けた。請戸は津波に遭い、消防団員でもあった潤也さんは行方不明になった。町民たちは、その捜索ができないまま、放射能に追い立てられるように避難を強いられた。いま、「乗り物センター三原」があった新町通りの建物は取り壊され、往時の面影はない。表面的にはきれいだが、それは浪江であって浪江ではなく、培われてきた地域の文化や営みは水泡に帰した。
冒頭の歌は、実家の取り壊しに立ち会った由起子さんが詠んだ。浪江の人たちの深い悲しみや、やるせなさ、無念さを思わざるを得ない。
(編集人 安竜昌弘)
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