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8月に読むべき1冊の本 | 563号 |
鎮魂の8月。戦争を知らない世代のひとりとして、戦争を意識し、向き合う機会をつくってもらえる時期でもある。そして1冊の本を開く。前田啓介記者(読売新聞)の『戦中派 死の淵に立たされた青春とその後』(講談社)。しかもこの本が第74回日本エッセイスト・クラブ賞に選ばれた。最近のさまざまな賞は裏事情が見え隠れしてげんなりなのだが、この本は掛け値なしでいい。心から拍手を送る。そして1人でも多くの人が読むことを勧めたい。
前田記者は1981年生まれ。「戦中派」だった祖父の人生を思ったことをきっかけに、青春時代に戦争の最前線で「死の淵に立たされた」男たちの、その後の長い人生や思いを丹念に取材した。地味だが地に足がついていて、その世界に引き込まれていく。敬愛する川本三郎さんも毎日新聞の書評で「心震える労作」と評価した。嬉しい1行だった。
「より大きな『思想』は、好奇心を原動力に、日常の些事から着想し、そこから歴史をたどり、たどりついたところから現代を見てみたい。そのために、文献があれば読み、人がいれば会って話を聞きたい。それらによって得られた情報を『人文的』、『科学的』に有機的に結びつけ、分析する。その過程に事実の裏付けも含まれる」(前田啓介・WEBアステイオン)
新聞記者である以上、スペシャリスト(専門家)になることはできず、究極のジェネラリスト(幅広く、深い知識を持つ存在)をめざし続けなければならない。頂上は見えず、道はまだ険しい。
(編集人 安竜昌弘)
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