omb541号

 紙面を読んで From Ombudsman541 

 

画・松本 令子

 

 中部  博

 ぼくは「日々の新聞」が好きなのだが、それはなぜなのかと考えているうちに、どういうわけか「ビレッジ・ボイス」とナット・ヘントフが思い浮かんでしまった。むのたけじと「たいまつ」を思い浮かべろよ! と突っ込まれたら笑えると思った。
 どうして「ビレッジ・ボイス」なのかといったら、このニューヨークのグリニッジ・ビレッジで発行されていた世界的に有名だった小さな雑誌の主要な書き手のひとりがナット・ヘントフで、ぼくはそのファンだからである。高校生のときにヘントフの『ペシャンコにされてもへこたれないぞ!』を読んでファンになった。ひと世代上のアメリカのビートの人なので世代的共感は薄いのだが、その小説を読んでいるとモダン・ジャズのドラムセットのスネアやシンバルのリズムが聴こえてくるのがよかった。
 そこまで考えて、ようやく自分の思いつきの回路がわかった。ヘントフと「ビレッジ・ボイス」がまちきらかしたモダニズムが、「日々の新聞」と通底していると思ったのだ。ぼくは「日々の新聞」のもっているモダンなところが好きなのである。文章にせよデザインにせよ、とてもモダンだ。
 話はかわるが「ビレッジ・ボイス」の創刊者であるノーマン・メイラーは、GHQの兵隊の一員として小名浜に駐留していたことがあると知った。「日々の新聞」はまるっきり無縁ではないようだ。
 縁といえば「日々の新聞」が「ALPS処理汚染水海洋放出問題」を特集したとき、そこに若い時代の仕事仲間であった俳優の斉藤とも子さんが登場して、ぼくはこの新聞との浅からぬ縁を感じたことがあった。まさか彼女が紙面に登場するとは考えたこともなかった。
 モダンも縁も感じる「日々の新聞」にひとつ注文があるとすれば、この新聞は絵や映像を感じさせるくせに、ぼくには音楽が聴こえてこない。音楽が聴こえてきたら「日々の新聞」をもっと好きになる。

 (ノンフィクション作家・日本映画大学非常勤講師)



 

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