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楽日初日

 私の誕生日は8月31日です。夏休み最後の日。長い自由な日々の最後の日が私のスタートの日。そんな誕生日の日にちが持っているイメージは、私の思考性にも影響を及ぼしている気がします。私が作った造語で「楽日初日」という言葉はまさにそれです。
 この言葉を最初に使ったのは、2008年、金沢21世紀美術館で二年間にわたって行ったアートプロジェクト最終日です。金沢から水戸に作品を運び、水戸の展覧会の搬入をするというパフォーマンスのタイトルでした。金沢での展覧会の最終日(楽日)が水戸の展覧会の開幕日(初日)につながっていくという仕立てで、内容も朝顔の種が水戸に運ばれていくという、つながりをテーマとしたものでした。
 また、種自体も「楽日初日」そのものと言えるでしょう。夏に花が咲き誇った朝顔は秋には種子になり、活動のリズムを一時止めます。しかしこれで終わったわけではなく、蓄えている、時を待っている、次に備えている、遠い未来を見据えている…。そんな姿は新たなスタートのスタートとも言えるのです。
 この原稿を書いているのは2025年8月30日午前10時56分、東京から水戸に向かっている特急ひたち8号車14Dの車中からです。水戸には10分遅れの午前11時15分到着予定です。水戸芸術館で開催中の個展「ひとり橋の上に立ってから、誰かと舟を繰り出すまで」の公開制作が本日午後二時からあり、明日8月31日(日)午後2時時からは東京藝大連携企画「日比野克彦を保存する」シンポジウムを行います。66歳の楽日と67歳の初日は水戸で迎えます。
 今日から明日は私の「楽日初日」です。今日は66歳の1年間の楽日とも言えるし、66年間の楽日ともいえる。明日は67歳1年間の初日とも言えるし、67歳以降の日々の初日とも言える。水戸で開催している展覧会のタイトル「ひとり橋の上に立ってから…」という記憶は私の六歳の時の出来事です。その橋の絵も、そして誰かと繰り出した舟も、朝顔の種も、水戸に展示してあり、明後日朝顔は芸術館を覆って咲き誇っています! 
 そんな幸せな空間に囲まれながら、明日の初日の中で、次なるスタートを誰かと語り合っていきたいと思います。

                                    (アーティスト)