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エクアドルにて

 東京藝術大学のプロジェクトTURNでは「海外でのマイノリティーのコミュニティーにアーティストが滞在してその場の価値を見出し発信する」ことを行なっています。2016年のブラジルから始まり南米を中心にこれまで、アルゼンチン、ペルー、エクアドル、キューバ、ポーランドで展開してきました。今(九月九日)私はTURNでエクアドルのグアヤギルという街に来ています。前回はアンデス高地に位置する首都キトでの活動でしたが、今回は海岸部に位置する街になります。この街にある唯一の国立芸術大学のグアヤギル芸術大学(UArtes/UNIVERSIDAD DE LAS ARTES)と藝大(GEIDAI)とで交流しています。
 UArtesの成り立ちは日本の認識からするとかなり特異な歴史があります。グアヤギルのアーチストたちが街の中の道端とかでアートの教育活動を始め、その活動を国にアピールして国立になったというのです。それがまだ14年前の出来事です。現在もその精神は変わらず、街をアートでクリエイトしていこうということで、昨日は学長と40年前に廃止されたまま街の真ん中にある元刑務所を見てきました。ここを音楽学部の校舎に改装するというのです。
 独房の壁は厚く、防音には適しておりピアノのレッスン室にし、中庭には半屋外コンサートホールを作り、市民にも解放するというのです。予算は国外からも募り、来年から着工する予定とのこと…。この他にもUArtesはこれまで、市街地の元郵便局(国営であったが倒産)元新聞社、元銀行の建物を校舎にしてきました。
 大学をつくる事により街をつくっているのです。14年という中でのこの実行力を凄まじく感じられるのは、来年140年を迎えるGEIDAI、もしくは日本の高等教育の機構ではなかなかの難しい展開です。
 TURNプロジェクトではそれぞれのコミュニティーが持つ特性の違いを文化と捉えて互いの価値感を見出していくという活動ですが、歴史があるからメジャーであるとは限らない…ということも実感しています。改革精神に満ち溢れているUArtesにはGEIDAIでは見逃しそうなエネルギーがあります。グアヤギルの街はアマゾン奥地から流れてきているダウレ川、ババアヨ川、グアヤス川が合流する河口にあり、その川は太平洋に注ぎ込み、その海の先の先には日本があります。この地帯にあるバルビディアという村には縄文土器と酷似している土器が発掘されており、縄文人が海を渡ったか…というロマンもあります。私は実は30年前にバルビディアの遺跡に来ていたことを思い出しました。なんか縁を感じる、次なる展開を予感させるここ数日です。
                                     (アーティスト)

2026年9月9日午前5時半 エクアドル・グアヤギルの川沿いのアパートメント301号室にて