272号 秋吉久美子さん(2014.7.1)

画・黒田 征太郎

70年代のヒロインと上三坂の人たちとの交流

 秋吉久美子さん

 いわき市三和町上三坂の古民家を譲り受け、そこを拠点に活動をしている「OJYONCO」(おじょんこ)。メンバーはいわき市ゆかりの女性3人で、そのなかに女優の秋吉久美子さんが含まれている。先日、その発会式で「上三坂のことを話して」と講話を頼まれ、秋吉さんたちと交流した。
「秋吉久美子」といえば、同じ時代を歩んできた女優だけに、特別な感慨がある。磐城女子校時代は文芸部の部長を務め、在学中に映画「旅の重さ」のオーデションで次点になり、自殺してしまう文学少女の役を演じた。さらに「十六歳の戦争」「赤ちょうちん」「妹」などに主演し、70年代を象徴する女優として独特の存在感を示してきた。学生運動の燃えかすがくすぶる退廃的な時代のヒロイン、それが秋吉さんだった。
 その出演作品は割合見ているが、お気に入り映画は「妹」(藤田敏八監督)「の・ようなもの」(森田芳光監督)「異人たちとの夏」(大林宣彦監督)。テレビドラマでは「婚約」(市川森一脚本)と「夢千代日記シリーズ」(早坂暁脚本)が印象深い。自由でおおらかで個性が際立ち、魅力にあふれている。
「妹」ではこの6月4日、70歳で亡くなった林隆三さんと共演した。あの時代が色濃く映し出されている作品で、伊丹十三さんやひし美ゆり子さんも出演し、存在感を示している。
 嫁ぎ先から突然戻ってきて同居を始めたと思ったら、再び不意に姿を消してしまった妹。その消息を追って兄は屋台を引きながら日本中を旅する。何とも不思議で記憶に残る映画だ。
 震災後、秋吉さんは積極的に福島と関わりを持ち、自分ができることを続けている。静岡生まれのいわき育ち。小、中、高と過ごしたいわきには思い入れがあるようで、必ず印象深かったエピソードを語り、人の輪に飛び込んでいく。「OJYONCO」でもそうで、地区の人たちと屈託なく語らい、かけがえのない時間を楽しんでいた。
 さて「OJYONCO」はこれから何をしていくのか。いまのところ秋吉久美子の存在が目立ち、注目されているのだが、決して秋吉さんの会ではない。秋吉さんも自分の役割を理解していて、立場や人脈を最大限に活用し、節度を持って情報を発信しているようにみえる。要は都会と地方をつなぎ、さまざまな問題や課題を抱えている中山間地を元気にしたい、ということなのだろう。
 いわきの端っこにある上三坂はかつて、宿場町として賑わっていた。いわきから見れば辺境だが、郡山に近いので東京からだと新幹線を使えば、かえって近い。しかも変に都会化されていないから土地の風習や文化が残っていて、人間味にあふれている。それがいい。
 いま、いわきの山間部では人口減少が進み、小学校や中学校の統廃合が進んでいる。それは上三坂がある三和地区も例外ではなく、子供の数がどんどん減っている。そうした状況のなかで上三坂はどうするべきか、みんなで知恵を絞っている。
「ここには何にもないが自然と人情だけは、ふんだんにある」というのが地区の人たちの共通認識。そこにわいわいがやがやと「OJYONCO」が乱入してきた。ひょっとしたら、ありきたりではない化学反応が起こるかもしれない。
 おざなりではない、温かくてオリジナリティー豊かな地域づくりにつながれば、と思う。これからも静かに長く、注目していきたい。

(安竜 昌弘)

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