

押しつけ論も受け止めて平和を考える
憲法記念日 |
連休に入った。29日は「昭和の日」、5月3日が「憲法記念日」、4日は「みどりの日」、5日は「こどもの日」。それを確認しながら、昨年8月21日に101歳で亡くなった、むのたけじさんのことを思っていた。
ちょうど1年前の5月3日、むのさんは5万人を前にして「憲法を守れ」と訴えていた。場所は東京臨海広域防災公園(江東区有明)。「それは破れ鐘のような大きな声で、熱気がほとばしるスピーチだった」と、ジャーナリストの鎌田彗さんが話していた。
よほど印象深かったのだろう。俳人の黒田杏子さんもその時の様子を「大晩年 大音声の 野分星」と詠んだ。むのさんは、その数日後に入院し、夏に帰らぬ人となった。
むのさんの主張は、一貫していてシンプルだった。それは「戦争をしないこと」と「憲法九条を守ること」。自ら従軍記者として戦争の悲惨さや愚かさを目の当たりにし、その体験が血肉となって怒りのマグマに変わっていった。その言葉はいつも真剣で、ごまかしがなかった。
「戦争は始まったら止められません。国に逆らえば国賊と言われ、抵抗できません。だから戦争をしてはいけないんです。それには憲法九条を守り続ける必要があります。この押しつけられた憲法のおかげで、70年間、1人の戦死者も出していないんですから」
むのさんは、こう言い続け、若者たちに希望を託した。
冷静に、いまの時代を見る。小選挙区制で時の政権に抵抗できなくなり、独裁が加速した。多様な価値観は封じ込まれ、秘密保護法、安保法制、共謀罪と、憲法改正のための階段を着実にのぼっている。そしてその先には、戦争が待っている。
「飛躍しすぎだよ」と言う人がいる。でも、自分も含めて70歳以下の人たちは戦争を知らないのだ。だからこそ戦争を皮膚感覚で知っている、むのさんや野坂昭如さんの言葉を信じたい。共産党以外が手を結び大政翼賛会に参加した戦前の歴史を紐解きたい。おそらくさまざまな符号が精神をざわつかせることになるのだと思う。
3日は「平和憲法」について考える特別な日。押しつけの経緯も含めて学び、向き合う日にしたい。
(安竜 昌弘)
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