348号 楽天と近鉄(2017.8.31)

画・黒田 征太郎

気は優しくて力持ちもろさに愛嬌

 楽天と近鉄

 東北楽天イーグルスのナイターチケットが手に入り、仙台へ出かけた。ことし2回目の観戦。駅東口近くの定宿に車を置き、バスターミナルがある駅前へ向かう。ふと帽子が欲しくなり、駅前のショップに寄った。迷った挙げ句に灰色がベースの目立たないものを選んだ。
 ソフトバンクとの首位攻防戦、しかも先発が地元出身の岸とあって、満員の盛況だった。席は3塁手・ウィラーの斜め後ろあたりで、グラウンドが近い。試合は負けてしまったが、守備につく前にレフトの聖沢とキャッチボールをするためにオコエがすぐ近くまで出てきたので、「生オコエ」と観客とのやりとりを楽しむことができた。球団が生まれて13年目。すっかり仙台に定着したようだ。
 楽天は近鉄とオリックスの合併の際、生まれた。オーナー手動でプロ野球の再編が行われようとしたとき、選手やファンが抵抗し、大きなうねりになった。新球団の設立は50年ぶりで、選手をオリックスと楽天に分ける分配ドラフトが行われた。このとき、近鉄に愛着を持つ岩隈や磯部がオリックス入りを拒否し、楽天の創立メンバーになった。
 そういう意味で楽天の先祖は、近鉄ともいえる。梨田監督も近鉄の捕手として活躍し、その後監督になってリーグ制覇を成し遂げているから、なおさらそう感じるのだろう。ことし6月、青森県弘前市の球場で太田−梨田の近鉄時代のバッテリーによる始球式の映像を見た時には、感慨無量になった。同世代の2人だが、自分も含めて年をとった。
 近鉄は三原、西本監督のころからアウトローの雰囲気が漂っていた。個性派が多く、打撃中心の野武士的な野球で、荒削りの魅力があった。スマートな野球ができない楽天も、そんな伝統を引き継いでいるのだろう。強いときは強いが、崩れ始めるとガタガタといく。そこが、大技小技を駆使して負けない野球をする、ソフトバンクとの決定的な違いなのだと思う。
 ペナントレースも終盤にさしかかり、楽天が息切れしてきた。首位ソフトバンクに離され、3位西武に迫られている。でも、弱いことになれているのでファンはびくともしない。罵声を浴びせることもなく、温かく見守っている。

(安竜 昌弘)

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