374号 言論統制(2018.9.30)

画・黒田 征太郎

不誠実な政権はいつかは腐敗し終焉を迎える

 言論統制

 TBS系のテレビ番組「時事放談」が9月いっぱいで終わった。出演者の高齢化などが理由だという。「ついに時事放談も」との思いが強い。
 番組の歴史は古い。第1期は1957年から1987年までの30年間で、細川隆元、藤原弘達などの論客が歯に衣を着せずに政治を語り、永田町を叱り飛ばした。17年間の中断を挟んで2004年から第2期が始まり、司会が岩見隆夫さん(毎日新聞)から現在の御厨貴さん(政治学者)に変わり、政権に苦言を呈することができるゲストを呼んで、問題点をあぶり出していた。ただ最近はゲストの顔ぶれが限られ、行き詰まり感のようなものが見え隠れしていた。いわれのない批判や圧力などがあったのだろう。ついに44年にわたる歴史に幕を下ろした。
 いま、「知る権利」と「言う権利」が脅かされている。「おかしいことをおかしい」と言い続けると、どこからか圧力がかかり、降板となる。それはどういうルートでだれからの指示なのか、上層部の政権に対する忖度なのかはわからない。ただはっきり言えるのは、政権の御用記者が重用され、是々非々で政権と対峙する記者は陽の当たる場所から外されている、ということだろう。その結果、チェック機能が効かなくなり、政権に都合のいいニュースがたれ流されることになる。
 スピルバーグ監督の「ペンタゴン・ペーパース/最高機密文書」はニクソン政権とワシントン・ポストの闘いを描いている。機密文書の内容を報道したことに対して政権が記事の差し止めを求める訴訟を起こして、報道の自由に圧力をかける。国家権力と言論機関との攻防。ポスト社は存続の危機に陥って社論が二分されたが、社主のキャサリン・グレアムが編集主幹のベン・ブラッドリーを支持して闘う決断をし、勝利するという実話だ。
 その後、ポストはウォーターゲート事件をスクープ(「大統領の陰謀」のタイトルで映画化)し、ニクソンを退陣に追い込む。それにかかわった記者の一人がつい最近、トランプ政権の内幕を暴露する『恐怖(Fear: Trump in the White House)』を書いたボブ・ウッドワードだった。
不誠実な権力はいつか腐敗し終わる。歴史がそれを教えてくれている。

(安竜 昌弘)

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