483号 ある1日(2023.4.15)

画・勝川克志

 

  日帰りの東京 こころが温まる勝川克志さんの絵

 ある1日

 4月1日、「勝川克志原画展」のために上京した。場所は西武新宿線久米川駅近くの喫茶&ギャラリー「ベルハウス」。いわきを朝7時の電車で発ち、乗り継ぎ駅の高田馬場で昼食を摂った。
 学生時代に暮らしていた町。鉄腕アトムのメロディを耳にしながら改札口を出ると、「ビックイシュー」の街頭販売員が雑誌を掲げて購入を呼びかけていた。かと思うと、ミャンマー人女性が軍事政権に抗議し、マイクを握っている。この町を離れて50年近いが、当時の空気が残っている感じがして嬉しくなった。
 「牛たんねぎし」の看板があったので店に入り、ビールと定食を注文した。社長の根岸榮治さんはいわき市平の出身。料理が丁寧で店員もマニュアル至上主義ではない。気持ちよく店を出た。
 勝川さんの原画展は盛況だった。勝川ファンと思われる人や漫画家仲間、友人たちが次々と訪れ、ほのぼのとした勝川ワールドを堪能している。細密で丁寧なペン遣いと淡い色彩が心地いい。みんな勝川さんと話したいので人がたまってしまい、小さな喫茶店の人口密度が上昇した。少し話して「また今度」とあいさつし、辞した。
 帰りは午後六時ちょうどの上野発。駅構内にお気に入りの文具店があり、必ず寄る。SNSを眺めていたら、ベルリンにいるらしいかつての記者仲間・森暢平さんが「森鷗外記念館」の写真を投稿し、「曾祖父の記念館」と書き込んでいる。「え、知らなかった。まさか」と思ったら、なんとエイプリルフール。完全にだまされた。

                                       (安竜 昌弘)

そのほかの過去の記事はこちらで見られます。