

新聞は信書? 人手不足によって
ヤマト運輸から郵便局に変更
送料の悩み |
21年前に「日々の新聞」を立ち上げたとき、1番ネックになったのが配達方法だった。新聞は古くからの宅配制度によって成り立っている。全国に網の目のように張り巡らされている新聞販売店が配達して集金もする。その信頼が新聞を支えてきた。20年近く世話になった地域紙もそうで、新聞を届けている配達員が、読者の生の声というかたちで意見などを吸い上げてくれていた。
しかし日々の新聞には、販売システムを構築したり自前で印刷する資金的余裕などなかった。そんなとき、全国紙に「ヤマト運輸のクロネコメール便(現在はDM便)。全国どこでも80円」という内容の全面広告が載った。まさに「渡りに船」だった。担当者の説明では、「専用ソフトがありシールも提供できる」と言う。日々の新聞の読者はいわき市だけでなく北は北海道、南は九州までいるので願ってもないことだった。
3・11のときは地震と原発事故の関係で福島県内は配達がストップした。少し遅れたが新聞は刷り上がってきた。「なんとか県外の読者だけでも届けたい。近いところは手渡ししよう」と思い、茨城県で一番近い北茨城営業所(磯原)まで新聞を運んだ。ヤマト運輸とはそんなパートナー関係が続いていた。
ところが6、7年前から雲行きが怪しくなってきた。郵便局側から「信書が扱えるのは郵便局だけ」との指摘があり、新聞も微妙だという。その問題があって一時は郵便局に配達をお願いしていたが、送料の値上がりがあったこと、対応が今ひとつだったこともあって、新聞を配達できるかを確認して再び、ヤマト運輸に戻した。しばらくはさほど問題もなかったのだが、配達員不足によって郵便局への委託が増え、配達に時間がかかるようになった。そして1月下旬に突然、「DM便は2月から郵便局への全面委託になる。新聞は信書扱との判断なので配達できなくなった」と言われ、途方に暮れた。
郵便局の「ゆうメール」は150gまでで180円。それに移行すると送料が100円以上プラスになる。郵便局と相談し、定形外郵便を使うことにした。これだと50g以内で120円。日々の新聞の重さは何とかクリアできるが、チラシを入れると50gを超えることが多く、140円になってしまう。それではチラシ料金には見合わず、説明して負担の有無を確認しながらやっている。
これは、いま社会で起きている一端なのだろう。慢性的な人手不足による人件費の上昇、さらにそこから派生する物価高。当然、郵便料金も上がり続けていくだろう。そうしたことを考えると、21年にわたって約80円という送料を維持してきたこと自体、奇跡的なことなのかもしれない。ますます住みにくい世の中になっていく。
(安竜 昌弘)
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