024回 わたしの隠れ家(2006.6.30)

大越 章子

 

画・松本 令子

ナチュラルな温かさとやさしさ

わたしの隠れ家

 4月末、チャトーコテージの最後の取材の時だった。「お花屋さんのカフェでとってもいいところがあるの。そこへ行くとのんびりしちゃって、隠れ家みたいなの」。コテージのユウコさんが教えてくれた。
 そのお店は「Coya cafe なのはな」。金山町東台にある。行き方も教えてもらったはずなのに、記憶はあいまいで、お店に電話をして聞いて、6月の小雨の午後に訪ねた。「なのはな」は住宅地に静かにあった。 
 花屋で、アンティーク雑貨屋で、カフェの店。ドアを開けると、小学1年生のころ、教室にあった机やいすにホーローのパンケースやお皿、緑の鉢植えなどが並んでいた。雑貨の白と鉢植えの緑、それにテーブルや椅子、床の木の色がとてもナチュラルな雰囲気をかもし出している。
 掛け時計がよく見えるテーブルの椅子に座って、バナナのシフォンケーキとミルクティーを注文した。それを待つ間、じっと座っていられない。お店のなかをうろうろしながら、宝探しをする。アンティークな小瓶、如雨露、ブリキの自動車、ベビー服にベビーシューズ、ぐりとぐらの絵本…いろんなものがある。
 「読んでください」と積み重ねられた本のなかにターシャの庭の本を見つけた。確かに時間が動いていることを、掛け時計のふりこの音で確認する。さまざまな人に使われたものと、生命感のある植物とおいしいものが混在する、ふしぎな小屋だ。
 オーナーのコンノミキさんは14年前、OLを辞めて、植田の駅前で花屋を始めた。そこに最初はマグカップなどを置いて、それから骨とう、そして好みのアンティークを置くようになった。そのうち、花を買いに来たお客さんにお茶を出すようになって、カフェも始めた。
 自宅の一角に小屋風のお店を造ったのは昨年12月。駅前の環境が変わったためだった。建具や窓は駅前のお店で使っていたものを再利用した。花束にする花はお店の一番奥に置いていることもあって、花屋さんに見えない。「その花はどうするんですか?」と、お客さんに聞かれることがある。ナチュラルであまり色のない花が多い。
 好きなもの、嫌いなものはそれぞれある。だから自分が好きなもの、みんなに見てほしい、知ってほしいものを置いている。レシピもオリジナル。手づくりのやさしさと温かさがある。先日、布ものを集めた初めてのイベントも開いた。 
 山形や郡山、棚倉など遠くからも訪れ、本を開いたりしながらゆっくり、のんびりしていく。お客さんたちは思っている。「お客さんは来てくれなくちゃ困るけれど、あまり人に教えたくないお店」と。わたしだけの隠れ家にしたいから。  
 

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