001回 ローズカラーの車(2003.11.30)

大越 章子

 

画・松本 令子

甘い香りを漂わせクレープを焼く

ローズカラーの車

 夏ごろからだろうか。チコマート谷川瀬店(平)のそばを車で通る度、ローズカラーのかわいらしい車が気になっていた。車の周りにはいつも人がいて、その風景はストリートオルガンが流れるヨーロッパのまちのように、楽しげに見えた。
 ローズカラーの車はフランスのシトロエンHトラック。40年前ぐらいに造られたものだという。福島市のパティシエが始めたクレープ屋さん「ROMANDROLL」の移動販売車で、そのチェーン店として、このところ大きなまちに出現している。
 チコマート谷川瀬店の駐車場に止まっている車の主は蛭田信雄さん。昨年、勤めていた会社が倒産し、自分一人でできる仕事を探していた。 ROMAND ROLLを知り、「これだ」と思った。いわきにはない、洗練されていながら温かいメルヘンチックな雰囲気が気に入った。3週間、缶詰になって生地の焼き方を学び、8月にオープンさせた。
 生地は高温で一気に焼く。そして、ふつうのクレープとは違ってぐるぐるっと巻く。だからクレープではなくROLL(ロール)と呼ぶ。チョコバナナ、リンゴ、生イチゴなど種類はいろいろ。この冬は、むらさきいもや黒豆の和風も登場した。
 きょうも、子どももお年寄りも好みのROLLを注文する。甘い香りに包まれて、赤いCDラジカセから流れる音楽を聞きながら、できあがるのを待っているのもわくわくする。

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