老いは人間も動物もみんなにやってくる
17歳のるんるん |
飼い犬のるんるんが8月の誕生日に17歳になった。人間でいえば、90歳をゆうに超えている。毛色はずいぶん薄くなり、目も水晶体が白っぽく濁り、耳も遠くなった。相変わらずおてんばで、わがままで、朝と夕には散歩に出かけ、ご飯もぺろり平らげて「もっと」とねだるが、1年ぐらい前から眠っていることが多い。
それはまるで、散歩の時間を生活の中心に置いて、そのためにエネルギーを蓄え、備えているように見える。散歩の1時間前には小屋の前で待機し、いつもの時間に出かけないと催促して、ごきげんよく元気に歩く。顔見知りに会えばあいさつし、その日の気分で途中遊びもして、大好きな散歩を満喫している。
1日1日はそんなふうに過ぎ、1カ月前と比べれば何ら変わらないようでも、3、4カ月単位 で見ると、ここにきてどんどん老いているのを感じる。中型犬の場合、生まれて2年の間にぐんと大きくなり、そのあとは1年に4、5歳ずつ歳をとるので、季節ごとに誕生日が巡ってくる、と考えればいいのかもしれない。
誕生日の10日ほど前、何となく気になっていた右足を、かかりつけの動物病院で診てもらった。普段通 りに元気に歩いたが、時々、右前足だけ微妙にリズムが狂う。2カ月前に狂犬病の注射を受けに行った時に、前に痛めた爪を再度、治療してもらったが、それとも違うみたいだった。
先生は足首などにふれながら「高齢による関節炎だね。サプリメントを出しますから、朝晩の日に2回、飲ませてくださいね」と言って、説明書を手渡してくれた。ニュージーランドのモエギイガイから抽出して作られたサプリで、DHAやEPAなど91種類の脂肪酸の栄養が補給できるという。
それによって関節、皮膚や毛並み、心血管の健康を助けるらしい。モエギイガイのほか、オリーブオイルなど100%天然素材で作られていて、副作用の心配もないようなので飲ませてみることにした。小さなカプセルを1粒、好物の缶 詰に混ぜてスプーンで一緒に食べさせている。
飲み始めてから数日後、歩き方の違和感がほとんどなくなった。だんだん毛並みもよくなり、以前のようにわが家を訪れる人に吠え、帰宅すると出迎えるようにもなった。目に見える変化に母は「わたしもDHAとEPAのサプリメントを飲んでみようかしら」と言って、新聞広告を眺めるほどだ。
けれど老いは着実に進んでいる。雨降りの夜などにおねしょをしてしまうこともあり、先生に相談すると、これも高齢によるホルモンのバランスが崩れてのことという。ホルモン剤は副作用があるので、ビタミン剤も飲み始めた。老化は人間も動物も変わらない、としみじみ思う。
一方で目や耳のせいもあるが、あんなに嫌いだった海を怖がらず、波打ち際まで平気で行くようになり、散歩や動物病院で出会った犬たちに、自分から近づいて親愛の情を示す。以前なら、考えられなかった。少しのことでは動じず、ダイエットで体重は減ったけれど、悟ったように心根はどっしり、ずっしりしてきた。
老いと向き合いながら、日々楽しくまだまだ長生きしてほしい。
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