風の通る家

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 選挙の取材217話 

 市長選の取材でこのところ各候補者の選挙事務所を回り歩いた。雑談をしながら、責任者などに選挙情勢を聞く。繰り返し訪ねていると、事務所に流れる空気の変化が肌で感じられるようになる。
 いつごろまでだったか不確かだが、かつて選挙事務所では炊き出しをしていて、選挙参謀の時間があく夕方にふらり行って、いっしょに夕食をとりながら、選挙のことをさまざま聞いた。なかでも印象深いのはマツモトシゲルさん。新人時代からお世話になり、事務所に行くと「来たな。飯食うべ」と言って、選挙そのものから教えてもらった。
 炊き出しなので手の込んだ料理ではないが、なかなかおいしい。ある時、スティックきゅうりに添えられたディップ(調味料)が気に入って、炊き出しの女性に聞いた。「簡単なのよ、おろしニンニクに味噌とマヨネーズを混ぜただけ」。そうレシピを伝授してくれた。
 以来、お酒の友に時々そのディップを作る。きゅうりにつけて食べていると、選挙事務所がもっと熱くて、人間くさくて、お祭り騒ぎだったころを思い出す。マツモトシゲルさんのような選挙参謀もいまはなかなかいない。

 

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