風の通る家
カラスの餌食に | 229話 |
朝、出社してみると、駐車場に紙のようなものが散乱していた。薬の箱のようにも見える。一瞬、「嫌がらせ」と思った。玄関のドアに近づくとビニール袋にチラシが入っていた。ビニール袋には穴が空いている。その日は木曜日で生ごみの収集日だったが、賢いカラスは食べ物以外は襲わない。「おかしい」。とりあえず、軍手をはめてごみ袋を用意した。そのときすべてを理解した。
散らばっていたのはチョコレートの箱だった。箱の中には袋で包まれた板状のチョコレートが入っている。カラスはまずビニール袋を破ってチョコレートを取り出し、そのなかの袋を破ってすべて食べていた。残ったのはパッケージだけというありさま。
「甘いものでも食べて疲れを取ってください」という依頼主の優しい気持ちをカラスが台無しにした。でもチラシが無事で良かった。ごみ拾いが終わったと思ったら、電信柱の上で様子を見ていたカラスが「カァ」と鳴いた。
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