

計算しないで社会に身を委ね疾走し続ける
ヒビノはLIVE |
朝晩が涼しくなった。空には秋を思わせるすじ雲が出ている。この秋、「日々の新聞」とかかわりの深い3人が大規模な展覧会を開いている。アーティストの日比野克彦さん(水戸)、彫刻家の安藤榮作さん(奈良)、画家でイラストレーターの黒田征太郎さん(北九州)。わくわくしている。
9月の14日と20日、水戸芸術館で開かれている「日比野克彦展」に取材を兼ねて行ってきた。知り合う前から大好きな作家で、2001年にいわき市立美術館で開かれた展覧会で初めて会った。そのとき、「日々の新聞」(日比野克彦の日々)をボランティアたちと作り、その題字が現在の「日々の新聞」に使われている。日比野さんは快く許可してくれたうえに、現在271回を数えるエッセイを月1回、書き続けている。東日本大震災のときは編集室のチャイムが鳴ったので出て行くと、そこに日比野さんがいた。1958年8月31日生まれの乙女座で、とてもシャイ。制作中は、少年が工作するように作品作りに没頭する。
ヒビノといえばダンボール作品なのだが、2000年ごろからワークショップやアートプロジェクトが増え、人と関わりながら社会にアートの花を咲かせる活動にシフトし始めた。今回の展覧会は人や地域を巻き込んで行ってきたアートプロジェクトの検証、という意味合いが大きかったこと、展覧会の構成や作品選びを学芸員に任せたこともあって、「ヒビノテイスト(雰囲気)」が薄い感じがした。
特に年譜コーナーは、ヒビノ以外の人が関わったことでヒビノ色がトーンダウンしていた。それもあって、ヒビノはほぼ一日かけて手描きによる書き込みを行い、その違和感を緩和させた。ヒビノは優しい、そして、とても温かい。
「どうしてモチーフにアルファベット?」と尋ねると「線へのこだわり」との答え。「まるで桑田佳祐の意味がわからない英語の歌詞のようですね」と言ったら、あきれ顔で苦笑いされた。
ヒビノの人生はLIVE。計算しないで社会に身を委ね、疾走する
(安竜 昌弘)
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