小名浜高校と湯本高校の演劇部のOB、OG、両校を高校演劇の全国大会で日本一に導いた児玉洋次(ペンネーム・石原哲也)さんが中心になって二月に発足した劇団「いわき青春座」(松本由美子団長)のプレ旗上げ公演が6月8日午後7時から、小名浜市民会館で開かれる。芝居は小名浜高校が五年前に日本一になった「チェンジ・ザ・ワールド」、主役の2人は同じ笹川俊さん(22)と箱崎貴之さん(22)。5年の歳月のなかで、高校生から社会人になった2人が再び、不良の正ちゃんと余命幾ばくもないヤナを演じる。
舞台はシンプルに大道具の白いブロックが2つ。BGMに芝居のタイトルと同名のエリック・クラプトンの「チェンジ・ザ・ワールド」が流れる。仲間といじめをしている正ちゃんと、いじめを理由に転校してきた同級生のヤナ。病に冒され「あと半年」と宣告されたヤナとの交友から変化していく正ちゃんの姿から、いじめの問題を問いかける。
5年前、それぞれの事情で演劇部を一時辞めていた笹川さんと箱崎さんは、全国大会の切符を手に入れた後、児玉さんから復帰を誘われ、演劇部に戻った。2人はそれまでかかわってなかった自分たちが主役を演じることに葛藤があった。
周りから「やさしい優等生」と慕われ、生徒会長もしていた笹川さんはワルになりきれず悩んだ。役者的な素質をにおわす不思議な魅力がある箱崎さんも演じる気迫に課題があった。主役を演じる自分を認められなかった2人は、日本一になって初めて正ちゃん、ヤナを演じた自分を認めた。
高校卒業後、笹川さんは市内の解体業者に勤め、機会あるごとに児玉さん演出の芝居に出ている。箱崎さんは専門学校で声優の勉強後、現在はアルバイトをしながら役者の勉強をしている。
日本一になったビデオを見ながらもう一度、箱崎さんと「チェンジ・ザ・ワールド」をやりたいと思っていた笹川さん。箱崎さんも「笹川さんとできるなら」と、今回の出演を二つ返事で快諾した。
練習は青春座が発足した2月から週2、2日、5月に入って週3日ぐらい。千葉に住んでいる箱崎さんは高速バスで帰ってきて、練習に参加。まったく違う日常を送っている2人だが、練習に入るとすっと5年前を思い出した。
シナリオは一部書き足しがある。ほかのキャストやスタッフは5年前とは違う。脚本を書き、演出もしている児玉さんは、さらに「そこでの気持ちは」と役での気持ちを深く追求する。社会人になって、日々、さまざまな人たちとの関わりがあり、「今回の舞台は完全版」と2人は言う。
青春座のメンバーは現在、小名浜高校、湯本高校の演劇部OB、OG25人。後援会もつくられ、随時、高校生を除く18歳以上の劇団員を募集している。6月8日は昼間、小名浜高校の生徒たちに見せて、夜は一般公開(入場料500円)。後日、富岡高校、白河高校の生徒にも見せる。
そして、来年。児玉さんの新しい脚本で旗揚げ公演をする予定になっている。脚本はまだ、児玉さんの頭のなかで仕込み中という。
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