409号 2020年3月15日 |

ありのままに |
あの日から9年が過ぎた。週間天気予報では10日ごろから雨の予報だったので、3月の第1週から毎日のように海に出かけて、写 真を撮った。9日の月曜日は曇っていたが、薄磯に行ってみた。遠くに波打ち際で海を眺める3人の女性たちがいて、そっちに向かってだれかが歩いた、まだ新しい足跡を見つけ、カメラに収めた。
一人でずんずん歩いた、たくましい足跡なので、女性たちのものではないようだ。ずっと先まで続く足跡と、はしゃぐこともなく黙って海を見つめる女性たちの姿に、この9年の歳月とこれからを思った。その足跡が、薄磯に流れる時間の足跡に見えた。
9年という時間は過ぎてしまえば瞬く間だが、子どもたちの成長をみても、多くの時間の積み重ねなのがわかる。9年目から10年目にバトンが渡されたいま思うのは「ありのままに」ということ。表面 をとり繕うのではなく、ありのままに。
このところでは常磐線の全線再開に伴う、原発から10km圏内で帰還困難区域にある夜ノ森(富岡町)、大野(大熊町)、双葉(双葉町)のそれぞれの駅と周辺の避難指示の解除や、きれいに整備された場所を選んだ双葉郡の東京オリンピック聖火リレーのコースなどが頭に浮かぶ。
事故を起こした福島第一原発の敷地の980基近いタンクに入れられたトリチウムなどの汚染水も。ありのままに見つめ、これからを考えていくことが、遠回りなようで確実な歩みにつながる。そして、ほんとうの喜びになる。
天気予報に反して、3月11日は朝から青空が広がり、コートがいらないぐらい暖かで、穏やかな日になった。午後2時46分に響きわたった追悼のサイレンに祈り、涙があふれそうになった。
特集 あれから9年 海のはなし |
アクアマリンふくしま館長 安倍義孝さんに聞く
漁業は海・山・川の好循環がないとだめで、林業も健全でなければならないと言います。日本の山は大半が杉で貧弱になり、海にしわ寄せがきていて、原発があればそこで出す水や、何が入っているかわからない川の水などで沿岸の生態系がわびしくなっているとも言います。これまでの山や川などと漁業のつながりを紹介しながら、今進めていること、今度の取り組みなどを聞きました。
この20年 自然観の違い
アクアマリンのこれから
七浜捕鯨 いわきのこと
原発とトリチウム汚染
自然との向き合い方
新型コロナウイルス

福島県漁連会長 野崎哲さんに聞く
福島県漁連は海洋放棄に反対しています。トリチウムについてかみ砕いて説明してもらわないとわからないことを理由の一つにあげています。危険性、安全性はどうなのか。 震災後、消費者の安心を得るため進めてきたことが、「海洋放出」でどのようになるのか、影響予測をしてほしいと言います。

南相馬市長 門馬 和夫さん
貯蔵タンク増設の検討など、決して期限ありきでない対応を願う。
新地町長 大堀 武さん
「全量 を告示濃度未満にする」という原則を絶対的に守ること。トリチウムの除去は最後まで研究努力すべき。
飯舘村長 菅野 典雄さん
国が一つの方向を示さない限り結論は出ない。汚染水の処理は国が腹を決めることが大事。
記事 |
新型コロナウイルスのこと
いわき市に住む70代の男性が新型コロナウイルスに感染していることがわかりました。クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス」の乗客でした。男性が陰性と診断され下船してから、陽性と診断されるまでの経過を追いました。
連載 |
戸惑いと嘘(43) 内山田 康
再びムナナへ(1)
阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(6)ツバキ
DAY AFTER TOMORROW(205) 日比野 克彦
三カ月たった、
コラム |
月刊Chronicle 安竜 昌弘
木枯らし紋次郎
口に長楊枝 あてもない 旅を続ける ニヒルな旅鴉 狭まり続ける日常で カミュが読まれている