410号 2020年3月31日 |
祈りの火が歓喜の火になるように |
新型コロナウイルスの感染拡大で、この夏の東京オリンピック・パラリンピックが1年程度、延期されることが、3月24日に決まった。翌々日に楢葉町と広野町にまたがるJヴィレッジから全国に向けてスタートするはずだった聖火リレーも急きょ、中止された。
雲行きはすでに、古代オリンピック発祥の地のギリシャ・オリンピア市のヘラ神殿跡で行われた、12日の採火式辺りからおかしかった。感染拡大を懸念して無観客のなか、古代衣装をまとった巫女に扮した女性が、太陽の光を集めて聖火をともした。
前日、WHO(世界保健機構)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスについて世界的大流行を意味する「パンデミックと呼べる状態だ」と、パンデミック宣言をしていた。採火式のあとに始まった聖火リレーは、翌13日、人気映画俳優が走って沿道に観衆が殺到したために中止となり、以降、ギリシャ国内でのリレーは取りやめになった。
19日のアテネでの東京への聖火の引き継ぎ式も、無観客で簡素化して行われた。その数日前からヨーロッパ、そしてアメリカでの感染拡大が目立つようになり、オリンピックの延期を求める声が国々や選手から高まり始めた。
テドロス事務局長は23日、「パンデミックは加速している」と、世界的大流行がますます広がっている認識を示した。パンデミック宣言をした時、11万8千人ほどだった世界の感染者は33万人に増え、3日後の26日には44万人になった。
アテネから特別輸送機で20日に宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地に到着した聖火は、東日本大震災と原発事故で大きな被害を受けた宮城、岩手、福島の3県を2日ずつ巡って展示された。最終の展示は25日、海を臨む小名浜のアクアマリンパークで行われ、やわらかなオレンジ色の聖火がランタンから聖火皿に灯されて、2時間後、再びランタンに戻された。
いま世界中に感染拡大している新型コロナウイルスが収束して、この聖火は走者たちの手から手へつながれ、日本中を駆け巡れるようになる。その意味で、聖火は祈りの火であり、歓喜の火になってトーチからトーチに移されていくのだろう。
詳しいことはまだわからないが、聖火はしばらく福島県内に保管される。
特集 あれから9年 30km圏内のいま |
志田名、戸渡、久之浜は東京電力第一原子力から20~30km圏内で、線量 の高い地域です。原発事故後、高齢化、過疎化が加速しています。それぞれの場所のいまを取材しました。
志田名2020 春
志田名は台風19号で大きな被害を受けました。農地や土手が壊れ、通 行止の箇所もありますが、復旧はほとんど進んでいません。
原発事故で処理した除染土は11月までに中間貯蔵施設に運ばれることになりました。
震災から9年経って改めて見えてきた問題点、志田名はこれからどうすべきかなどを区長の松本英人さんに聞きました。
台風19号の打撃
放射能とイノシシ
志田名のこれから
大越アサ子さんのはなし
一昨年、夫が亡くなった後、アサ子さんはひとり暮らしをしています。内郷で避難生活をする息子が毎日、様子を見に来ています。
アサ子さんは、志田名の人が減っていると言います。「帰って来る子どもらはいないし、帰って来いとも言えない。安全っていうのはいつの時代になったら来るのかね」と話しています。
戸渡のこと
戸渡には昔からの人々が数軒暮らしています。60年近く前は60世帯が住んでいましたが、いま回覧板をまわしているのは4世帯だけです。戸渡で生まれ育ったという草野秀夫さんに話を聞きました。
久之浜のこと
駅近くにあった「寿司徳」に「売物件」の看板が立っています。経営していた浅川富美夫・文子夫妻の家を訪ね、話を聞きました。
現在、福島県沿岸は魚種の制限はなくなったものの、いまだに試験操業で量 が抑えられています。トリチウムの問題もあります。久之浜漁港で仲買人に聞きました。
高木重行さんのはなし
高木さんはコミュニティ商業施設「浜風きらら」の代表をし、ホテルを経営しています。
どういった思いから施設の立ち上げに関わったのか、これから久之浜はどう進むべきか、将来に向けて何をすべきか、などを聞きました。
記事 |
Fukushima50のこと
3.11の原発事故を扱った映画でドキュメントタッチで丹念に描かれています。
原発事故とは何だったのか。安全なところからテレビ電話で命令するだけの東電幹部、高放射能を浴び、死の恐怖と闘いながら作業する現場。その現場作業員がほとんど地元出身者であるという現実。そこから真実が見えてきます。
連載 |
戸惑いと嘘(44) 内山田 康
再びムナナへ(2)
いわきの地域新聞と新聞人(11) 小野 浩
オリンピック返上の頃の平市
阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(7)スミレ
ぼくの天文台2(52) 粥塚 伯正
夢が覚醒する
コラム |
ストリートオルガン(150) 大越 章子
ニューヨーク公共図書館