431号 2021年2月16日 |
兎渡路の家にようこそ
兎渡路は「とどろ」と読む。建っている場所が、いわき市平豊間兎渡路なので「兎渡路の家」と名づけた。平字下の町の木村眼科クリニック院長の木村肇二郎さん(81)と、副院長で妻の恵子さん(57)が3年ほど前から構想を練り、1月末にオープンした。障害を持った人も、そうでない人も過ごしやすい、バリアフリーの幅広く使える自由な空間だ。
肇二郎さんと恵子さんはこの10年、診療のかたわら目の不自由な人たちのサポート活動をしてきた。「おとなの遠足」と称してあちこちに出かけたり、ヨガ教室を開いたり。そのなかで、盲導犬を連れているとレストランに気軽に入れないなど、目の不自由な人たちを取り巻く日常の環境がさまざま垣間見えた。
目の不自由な人たちが気兼ねなく日常を楽しめ、さまざまな人々とふれあい、互いに知り合える場があったら。二人はそう思い、みんなで集まって、いろいろなことができる建物の建設を計画した。親しい建築設計士と大工に相談し、4人であちこちを訪ね歩いて、試行錯誤しながら兎渡路の家を造った。
肇二郎さんは2009年、足を滑らせてコンクリートに頭を打ち、硬膜下血腫になった。緊急手術を受けたものの、再度、出血してしまい、豊間にあった国立病院機構いわき病院に40日ほど入院した。その間、恵子さんと海岸をよく散歩した。
思い入れのある豊間が、東日本大震災で津波に襲われ、変わり果てた姿になった。その後、護岸工事が行われ、区画整理もされたが、人家はまだまばら。病から救ってくれた場所に建てて、地域の人々に恩返しをしたい。兎渡路の家にはそういう思いも込められている。
オープンはしたけれど、いまも大工があちこちで作業し、植木屋が木々を植えるなどしていて、進化する家なのだという。いろいろな人が集い、楽しみながら互いを知り、それを日常で実践すれば、やがてバリアフリーがもっともっと広がる。その時、兎渡路の家は木々が育って、森のなかにあるように思えるかもしれない。
兎渡路の家には木村眼科クリニックの歴史を感じさせるコーナーがさり気なくある。その歴史の扉を開けて、なかに入ってみる。
特集 町医者 三代 |
いわき市平字下の町の木村眼科クリニック院長の木村肇二郎さんと副院長で妻の恵子さんが、平豊間兎渡路に「兎渡路の家」を建てた。目の不自由な人たちが気兼ねなく日常を楽しめるバリアフリーの建物で、現在は「触れる彫刻展」が開かれている。町医者であることにこだわった木村家三代の歴史をたどりながら、肇二郎さんと恵子さんの思いを紹介する。
木村家の人々
少年時代
医者の道へ
慶応大学病院の医者として
いわきでの開業
震災でのこと
医者としての使命
優しい社会とは
「兎渡路の家」のこと
記事 |
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フォーク者 イサジ式
連載 |
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