「どうして走るんですか」と尋ねられ、「独りになれるから」と答えたランナーがいた。
フルマラソン、42.195キロ。男子の一流選手でさえ、2時間と少しを走り続ける孤独で過酷な競技。「選手たちはレース中、何を考えて走っているんだろう」と思うことがある。
イギリスの作家、アラン・シリトーの『長距離走者の孤独』は、走りながら考えるさまざまなことを基調に物語が構成されている。
友だち2人とパン屋に押し入り、強盗を働いて感化院に入れられた主人公・スミスが全英長距離クロスカントリーに出場することになる。
走ることが嫌いなわけではない。走っているときは孤独だが、走りながらいろいろなことが頭の中に浮かんでは消える。そして、「この孤独感こそ世の中で唯一の誠実さであり現実であり、決して変わることのないという実感である」と考えている。目に映る世の中があまりにも偽善にあふれているから、変わることのない真実を求めて憤り、黙々と走り続けるしかないのだった。
来年の2月14日、いわきでフルマラソン大会が開かれる。定員は3000人で、市は「大会を通していわきを全国に発信、アピールしたい」と意気込んでいる。コースも平から鹿島街道を通って小名浜方面に向かい、海岸線を走る案に決まった。都内の名所を巡る先の東京マラソンなどの様子を見ていると、「この何もない、いわきで大丈夫なのか。3000人も集まるんだろうか」と余計な心配をしてしまう。そして、どうしても二番煎じの感が否めない。
市長を先頭に警察の協力を仰ぎ、何とか道路の使用許可を得てここまで漕ぎつけたのだという。その苦労を無駄にしないためには、いわき色を最大限に生かす独創性が必要だろう。他地区からやって来るランナーたちにいい思い出を持って帰ってもらうためにも、「ただやればいい」という型にはまったありふれた大会にしてほしくない。
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