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 「第92回選抜高校野球大会」(3月19日から甲子園球場)の出場校が発表された24日午後、いわき市平の高月台にある磐城高校校長室では、その瞬間を待ち構えていた。新聞社やテレビ局のカメラが阿部武彦校長を囲み、電話の着信音に集中した。午後3時、予定の時間が来たのだが、ベルは鳴らない。1分が過ぎた。それから何秒経っただろう。待ちに待った電話が鳴り、磐城の21世紀枠での甲子園出場が決まった。春は46年ぶり3回目、夏の7回も合わせると通 算10回、25年ぶりの甲子園だ。
 チームの原点は、昨年夏の初戦敗退だった。白河旭に5-6と苦杯を喫した。最終回に1点差まで詰め寄ったが、逆転できなかった。ベンチ入りしていた2年生は7人、うち4人が試合に出ていた。そこから勝つための練習が始まった。できる限り思ったことを言い合い、キャッチボールなど基本を反復した。それを積み重ねているうちに、「沖-岩間のバッテリーを中心とした守りで相手にプレッシャーをかける」というチーム像ができ上がった。
 新人戦は県大会で3位になって秋としては12年ぶりに東北大会に出場。東海大山形を6-0、能代松陽も2-1と下して準々決勝に進出した。準々決勝では守りにミスが出て仙台城南に3-6と敗れたが、公立校として唯一ベスト8に残り、21世紀枠での推薦・出場につながった。

 磐城はこれまで甲子園で7勝している。なかでも印象深いのが1971年夏の戦いぶりだろう。決勝で桐蔭学園(神奈川)に0-1と惜敗したが、失点はこの1点だけ。戦った4試合でのエラーは一つもなかった。きびきびとした攻守交代、感情を表に出さない淡々とした試合運び。猛練習で培った技術と精神力で、普段通 りの野球をすることに徹した。
 意識はつねに目の前にあるボールとグラウンドに置き、試合に集中した。大会前、だれ一人として磐城が決勝に残るとは思っていなかった。平均身長が170cmそこそこの公立進学校の快挙は、高校野球界にさわやかな風を巻き起こした。
 当時のエース、田村隆寿さんは母校の甲子園出場を知り、スポーツ紙のインタビューでこう話している。
 「バッテリーには相手を研究してほしい。意外に外角は打たれる。逃げずに攻めの投球を心がけるべき。21世紀枠での出場だから、私立のチームから点を取るのはなかなか難しいと思う。投手がコントロール主体で踏ん張り、1点差で勝つ野球をめざしてもらいたい」
 これから何をすべきか、を的確にアドバイスしている。

 「男女共学校になったし、磐城はもう甲子園に行けないのではないか」という声をよく聞く。そうしたなかでの21世紀枠出場だ。周りはいやに浮かれている。ここは選手たちに意地を噛んでもらいたい。いわば人情がからんでの甲子園出場。「お情け」と言われても仕方ないだろう。だから、それをバネに練習に励み、「本番の夏では聖光学院の連覇を阻んで実力で甲子園に出て優勝する」という気概を持ってもらいたい。
 春の選抜はあくまで通過点であり、チームとしての集大成は夏。春の甲子園出場で満足し、夏に潰れてしまったら、この1年間の思いは露と消えてしまうことになる。「夏に強い磐城の伝統が泣かないように気を引き締めて」と願っている。


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