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 原子力発電のシステムは、ひとたび大事故が起これば取り返しのつかない事態となりますし、運転により発生する大量 の放射性廃棄物については、いまだにその処分方法も定まってはいません。その管理や処分は無責任にも未来世代に委ねることになるのでしょう。原子力発電のシステムは人間社会と共存できない、受け入れられない技術なのだと思います。しかし現実に大事故が起こってしまった福島第一原発については、その影響や終息に関して英知を結集して対処する必要があるのでしょう。

 事故により今も発生している汚染水については、どうしたら良いのでしょうか。
 そもそも汚染水とは何なのでしょうか? 福島第一原発の大事故により3つの原子炉で炉心溶融が起こり、原子炉内で生成していた膨大な量 の放射性物質がメルトダウンしました。そこに日々、地下水が流れ込み、放射性物質が地下水に溶け込み、今も毎日、汚染水が発生し続けているという訳です。原子炉内で発生した膨大な量 の放射性物質はその種類も多岐にわたっています。

 現在、タンクに保存されている汚染水にはトリチウムのほかに、わかっているだけでも、合計すれば放出の法定基準濃度を超えている、放射性ルテニウムやストロンチウム90、ヨウ素129などが存在しています。2019年12月末時点で、トリチウム以外でも実にタンク貯留量 の72%が放出の法定基準濃度を超えています。汚染水を希釈して規制濃度以下として放出するとしても、放出される放射能の全体量 が減るわけではありません。

 汚染水は、海洋放出の際には放射性核種除去装置ALPS(アルプス)を通 して、2次処理(再除去)するとのことですが、すべての放射能が除去されるわけではありません。東京電力の資料(「多核種除去設備等処理水の性状について」及び「高性能ALPS処理水62核種評価結果 」 2018年)によれば「ALPSは、滞留水に含まれるトリチウムを除く放射性の62核種を告示濃度限度未満まで除去できる能力を有するよう設計されている」と記されています。
 しかし、滞留水に含まれる放射性物質は、トリチウムと放射性の62核種のみではありません。放射性の62核種もALPSで完璧に除去できる訳でもなく、またALPS処理を通 り抜けるその他の放射性物質が、トリチウム以外にも必ず存在しています。それらの放射性物質の中には、いまだ測定方法や除去方法も確立されていない放射性核種も存在しています。

 こうした状況で汚染水が海洋放出された場合、トリチウムは海水と潮の流れにより希釈・拡散するでしょうが、放出される放射能の全体量 は変わりません。放出されるトリチウム以外の放射性核種の中には、生物濃縮する核種も存在し(トリチウムには通 常の意味での生物濃縮はないと言われていますが、トリチウム水の一部は生物に取り込まれ、また生物の組織に有機形態となって取り込まれますし、その一部はDNAにも取り込まれます)、福島沖での海産物は風評被害に留まらない実害が発生する可能性があると思います。

 東京電力の最新資料(2020年3月24日)によれば、放出は「一度に大量 に放出せず、年間トリチウム放出量は、既存の原子力施設を参考とし、廃止措置に要する30〜40年の期間を有効に活用する」と記載されています。これは海洋放出の場合には、30〜40年かけて、トリチウムを法定濃度以下として放出するということですが、トリチウムを含む汚染水は他の放射性核種も含んでいるのです。

 このような状況で汚染水を30〜40年かけて海に流すなどもってのほか、と私は思います。海はゴミ捨て場ではありません。地球環境を保全し、私たちの生活基盤を提供しています。(いわき放射能市民測定室たらちねベータラボ顧問・アドバイザー、元日本原子力研究所主任研究員)


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