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稲葉さんと川口さんの窯名は「マンナチェラミカ」。「マンナ」とは、聖書に出てくる神が天から与えた恵み、美味しい食べ物。「チェラミカ」はイタリア語でセラミック。陶磁器を意味する。二人はクリスチャンであり、ライフスタイルを大事にする。自分たちの作品を生活雑器としてとらえ、それが、さまざまなかたちで生活のパートナーになってもらえたら、と思っている。
5月24日まで、ギャラリー創芸工房で2人展を開いた。美しくてシンプルなフォルム、透明感があって温かい風合い…。しかも二人の個性が重なり合って、モダンで柔らかい風が吹いている。その陶磁器の群れは、まさに「マンナチェラミカの空間」をかたちづくっていた。
「最初から最後まで手をかけたい」。それが、さまざまな道を模索し続けた二人の結論だった。それは、どう生きるか、という自分への問いかけとも言えた。デザインをしても、設計をしても、「何か違う」という乾きのようなものが心の奥底に残った。それが次第に大きくなり、違う道へ進む原動力になった。今、陶磁器をつくる、という日々を通
して、自分はこれから何をめざすか、がおぼろげながら見え始めてきた。
基本的には稲葉さんが磁器、川口さんが陶器、しかも鋳込みで制作するが、それに凝り固まっているわけではない。お互い刺激し合い、影響され合って、自分が表現できる日用品をつくりたいと思っている。だから、今回の2人展は、定番ものではなく新しいもの、一点ものにチャレンジする、という意味で大きかった、という。
「器で生活を豊かにしてほしい」というのが二人の願い。さらに、稲葉さんは料理とそれを盛る器とのハーモニーを楽しみ、川口さんは、器単体だけではなく、それが置かれる空間にまでこだわりたい、と思っている。おそらくこれからは、これまで二人がやってきたことが、体の中できちんと機能し、新しいステージへと向かっていくのだろう。 |
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