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吉田きみ子さん (主婦)
 
 平字才槌小路の地下歩道の近くに「デリエ」はある。
 デリエとはフランス語で「解放」という意味。築100年以上という古い木造の建物そのものが「デリエ」なのか、その場所を共同で借りて絵を描いている女性の仲間たちを「デリエ」と呼ぶのか…。今となっては、それはどうでもいいことになった。
 「デリエ」では、それぞれが、自分の都合の良い時間に自分のスペースで油絵の具まみれになって絵を描いている。メンバーにとって「デリエ」とは自らの精神を解放し、自らを知るためにキャンバスと向き合う、かけがえのない場であり、核のようなものなのだ。  吉田きみ子さんもデリエで絵を描いているなかのひとり。
 静岡県藤枝市出身。54歳。夫の転勤、子育て、そして舅・姑の看護…。女性としてごく普通 の人生を一生懸命生きながらも、漠とした物足りなさを感じていた。木彫を始め、その資金を得るために働いた。さらに回帰するように絵に移り、何となく絵を描く日々が続いた。
 絵への回帰。それは女性として生きた末での空白感がもたらしたものだった。若いころ、武蔵野美大の通 信教育で絵を学んだ、とは言っても、最初はほんの趣味にすぎなかった。そうしているうちに、ある出会いがあった。
 「デリエ」の命名者であり、画家の稲川敏之さん。美大の教授だった稲川さんは「今から大学に入学するつもりで絵を描きましょう」と言った。それからは、絵を描くうえでの基礎を教えるとともに、「大事なのは何を感じて何を表現するか、ということ。表現するということは、うまい下手ではなくどう感じるかということ。感じることができるのがいい絵」という本質をさりげなく訴え続けた。
 それをきっかけに、きみ子さんにとっての絵は、一生懸命な趣味から、生活の一部、そしてかけがえのないものへと、深化して行った。さらに、「何で絵なのか。自分が絵を描く意味は」という命題のようなものが、まとわりついて離れなくなった。のめり込んでいるようでのめり込んでいない―。そんなジレンマを感じながらも、今では「結局、自分を知る旅の一つなんだろう」と思えるようになった。
 きみ子さんは「第58回県総合美術展」で公募の最高賞・県美術賞を獲得した。50号の作品「灼熱」はいったん描いたものをつぶして、夢中で描いた。手応えを感じ、見えなかったものがぼんやりと見えたような、そんな気がした。
 そして思う。「生活をおろそかにしては生きていけない。まず生活の中に根を張ること、それがなによりも大事」だと。






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