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この日、日比野さんは予定の時間になっても美術館に現れなかった。実は前の日、作業が一段落した午後9時すぎ、みんなで食事に出たのだ。場所は平の田町にある地魚を食べさせてくれる「磯」という飲み屋さん。「こりゃうまいね」と日比野さんが気に入ったのが、メヒカリの唐揚げとサンマのつみれ汁。生ビ−ルを飲みながら岐阜の実家の話や美術界の話で盛り上がり、時計を見たら、午前零時を過ぎていた。日比野さん、展示作業の疲れとほどよいアルコールで寝過ごしてしまったのだろう。
日比野さんがいないと、作品の補修や展示が進まない。
午後零時50分ごろ、スタッフが昼食をとりに外へ出かけると、宿泊先のホテルから歩いて美術館に向かっている日比野さんと遭遇。一緒に昼食を食べてから、予定を大幅に遅れてのご出勤となった。美術館到着、午後1時50分ごろ。
日比野さんの作品補修が始まった。かつての自分と向き合うように、作品集をわきに置きながら、ていねいに補修が行われていく。
日比野さんの眼差しがすっかり20年前に戻っている。四つ車のついた運搬台のうえに補修のための材料を乗せ、なくなっている部品を一つひとつ作っている表情は、何とも楽しそうだ。
この日、日比野さんは記者のインタビューに答え、「時代とつきあうアートをめざしている。今回の展覧会は、これまでの自分の作品と向き合うことができて良かった」と話した。
会場は、すっかり「日比野ワールド」になった。
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