464号 2022年6月30日 |
いまの政治をつくってしまったのは私たち一人ひとり
第26回参議院選挙が22日に公示され、18日間の選挙戦に入った。投開票は7月10日で、国会の新しい体制が決まる。報道各紙は「ウクライナ侵攻による物価高への対策が争点」と報じている。しかし一番危惧しなければならないのは、この選挙の結果次第では、憲法改正のための発議へと進んでいくことになる、ということだと思う。でも有権者の関心が低く、投票率は50%を超すかが微妙なところだ。
6月11日、ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川一区」を監督した大島新さんに話を聞いた。そのなかで大島さんは「かつて森喜朗さんが『無党派層は家で寝ていてくれればいい』と言いました。それが20年ぐらい前のことだと思うのですが、いまはまさにそういう結果になっているわけです。民主党政権ができた衆議院選挙では投票率が70%だったのに、いまは50%を少し上回るぐらいです。当然、組織票が有利になります。でも自民党の得票率は20%ちょっとです。『最強政権』と言われても四分の一ぐらいの信任で決まってしまうわけで、『これでいいんですか。みなさん』って言いたいのですが、残念ながら現状維持をよしとしている人が多いわけです。今回の参議院選もみんな興味がなくて、投票率は50%もいかないのではないでしょうか。正直なところ、半分、絶望的な気持ちです」と話した。
参議院は「良識の府」と言われる。任期が6年で解散がないこと、戦後の第一回選挙のあと、是々非々を掲げ、党議拘束もかけなかった無所属議員による院内会派「緑風会」が主導権を握ったことも、大きい。会の名称に緑を使ったのは、七色ある虹の真ん中に位置していることから、「右にも左にも傾いていない」という意味もあった。
しかし第7回参議院選(1965年)から「緑風会」の姿が完全に消えたこともあり政党化、衆議院のコピー化が進み、参議院の多様性、議員自らが判断する公正中立性が失われていくことになる。さらに各党が全国的に知名度の高い候補者を全国区や比例区に擁立することが増えて「参議院とは?」が問われ始める。その結果、政局に巻き込まれることも多くなり、その独自性、存在感を示すことがせずにここまできた。
「良識」とは「偏らない適切で健全な考え方であり、そういう態度の見識」だという。はたして衆・参両院議員の中に、こうした良識や見識を持っている議員が何人いるだろうか。とはいえ、その嘆きやため息は、ブーメランのように自分に返ってくる。いまの政治や政治家をつくってしまったのは国民一人ひとりだということを、胸に刻まなければならない。
特集 政治へのまなざし |
7月10の投開票に向けて参議院選挙の街頭活動が展開されているが、市民の関心は薄い。それはなぜなのか。ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川一区」を監督した大島新さんにインタビューするとともに、政治家とは選挙とは、日本はこれからどこに向かっていくのかを考える。
大島新監督のトークショーとインタビュー
小川淳也さんのこと
岩城光英さんのはなし
記事 |
2022参議院選
参議院選が6月22日に公示され、7月10日の投票日まで18日間の選挙戦に入っている。福島選挙区では改選一議席に新人5人が立候補。物価高騰や円安対策、ウクライナ情勢を受けた安全保障対策などが争点といわれるが、憲法改正を問うている選挙でもある。
西尾正道さんのはなし ①病について
北海道がんセンター名誉院長の西尾正道さんの講演会(いわき放射能市民測定室たらちね主催)が6月18日、いわき市文化センターで開かれた。「汚染水の危険性を考える」と題した講演会で、福島第一原発の敷地内のタンクに貯めているトリチウムなどを含む汚染水の海洋放出による人体への影響についてのはなしを数回にわけて紹介する。
連載 |
戸惑いと嘘(82) 内山田 康
見え隠れする傷跡たちの間で②
時空さんぽ 再び 〜磐城平城を訪ねて(30)
其の二十七 五町目
阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(61)マユミ
汚染水とは何か?パンドーラーの箱(3) 天野 光
汚染水中のトリチウム
ひとりぼっちのあいつ(41) 新妻 和之
二十二歳の葬送曲
コラム |
月刊Chronicle 安竜 昌弘
ある区切り
組織はいつも個人を守らない