第466号

466号
2022年7月31日
アクアマリンふくしまの『絵本すいずくかん』のスイミー

 

わたしたちは海のためにどんなことができるのか

 

ちいさな魚たちが力を合わせ、大きなさかなになって泳ぐ――この絵を見たら、絵本作家レオ・レオニ(1910―1999)の『スイミー』と、すぐわかる。1963年に出版され、日本では3年後、谷川俊太郎さんの翻訳で好学社から出された。77年から光村図書の小学2年生の国語の教科書にも載っている。

 赤いきょうだいのなかで1匹だけまっ黒で、だれよりも速く泳げるスイミー。きょうだいはみんなお腹を空かせた大きなマグロに呑み込まれてしまったが、スイミーだけが逃れられた。ひとりぼっちで海をさまよいながら、さまざまな生きものに出会って元気を取り戻し、きょうだいたちによく似たちいさな魚の群れに出会う。
 大きな魚を恐れて隠れて暮らすそのちいさな魚たちに、スイミーは「いつまでもじっとしているわけにはいかないよ」と言い、海で一番大きな魚のふりをして、みんなで一緒に泳ぐことを提案。大きな魚の目にはスイミーがなり、輝く光のなかをみんなで泳いで、大きな魚を追い出す――そういうおはなし。

 『スイミー』をテーマにした「絵本すいぞくかん」(来年5月7日まで)が、アクアマリンふくしまで開かれている。スイミーのおはなしを辿りながら、物語に登場する海の生きものたちの生態を学び、実際に目にすることもできる。
 例えば、マグロは悪者なのか。もちろんマグロは海のなかで強い存在だが、クロマグロはわたしたちが捕りすぎていて、だんだん数が減ってきている、と説明している。また魚が群れをつくるのは生きるためで、身に迫った危険を避け、大きな生きものに見せるとも解説。いわき沖でも水揚げが増えている伊勢エビや、ミズクラゲにも会える。
 スイミーたちが暮らす海の世界の最後には、本のあとがきのような「おわりに」というメッセージがある。
 「姿、形の違うさまざまな生きものが住む豊かな海の世界がいま、どうなっているでしょう。ごみで汚れたり、水温が上がって生きものが変わったり、さまざまな問題が起きています。わたしたちは海のためにどんなことができるのか」。そうメッセージは問いかけている。
 困難から逃げずに智恵と勇気で乗り越えようとするスイミーなら、目の前にあるいわきの海の問題とどう向き合い、考え、行動するだろう。


 特集 原発事故の責任は 株主代表訴訟

 東京電力の福島第一原発事故にからむで株主代表訴訟で、津波対策を怠って会社に巨額の損害を与えたとして、勝股恒久元会長たち4人に計13兆3210億円の賠償を命じる判決が下った。その経緯をまとめるとともに、株主代表訴訟の原告で福島原発刑事訴訟支援団長でもある佐藤和良さんから話を聞いた。 

 

 記事

海から福島第一原発を見て
 いわき放射能測定室たらちねの海洋調査(7月19日)に同行した。富岡港から福島第一原発までに見えた風景から感じたことなどをまとめた。



小野町の一般廃棄物処分場問題

県は7月15日、小野町の夏井川沿いにある一般廃棄物の最終処分場の埋め立て容量を増やす変更許可申請を認めた。夏井川から飲料水を取っているいわき市は、その決定に抗議した。1993年の設置許可申請からの流れ、市民団体の反対運動、裁判などを振り返る。



西尾正道さんのはなし ③トリチウムについて

 北海道がんセンター名誉院長の西尾正道さんの講演会(いわき放射能市民測定室たらちね主催)が6月18日、いわき市文化センターで開かれた。「汚染水の危険性を考える」と題した講演会で、福島第一原発の敷地内のタンクに貯めているトリチウムなどを含む汚染水の海洋放出による人体への影響についてのはなしを数回にわけて紹介する。


「戊辰の役 長橋合戦の図」のはなし

長橋を渡って進軍する柳川藩


ギャラリー見てある記

水木しげる 魂の漫画展  原画の素晴らしさに圧倒される


高久ばなし file2

砂のはなし
養鶏のはなし


 連載

戸惑いと嘘(84) 内山田 康
見え隠れする傷跡たちの間で④


時空さんぽ 再び 〜磐城平城を訪ねて(32)
其の三十 鎌田町


阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(63)アカメガシワ


汚染水とは何か?パンドーラーの箱(4) 天野 光
汚染水に含まれるトリチウム以外の放射性核種

 コラム

月刊Chronicle 安竜 昌弘

梅乃さんの命日
本当のことを心ある人たちに確実に伝えたい