471号 2022年10月15日 |
だれかがだれかを思う気持ち
それが生きる支えになる
小学二年生の国語の教科書に、アメリカの絵本作家アーノルド・ローベル(1933-1987)の『ふたりはともだち』の「おてがみ」が載っている。
一度も手紙をもらったことのないがまくんに「来ない手紙を待つ時間が悲しい」と言われ、かえるくんは家でがまくんに手紙を書いて、かたつむりくんに手紙を届けてほしいと頼んだ。しかし、かたつむりくんなので、がまくんの元になかなか届かない。ふたりで玄関に座って待つこと4日、ようやく、がまくんに手紙が届いた――というおはなし。手紙がくることを信じないがまくんに「きっとくるよ。ぼくが手紙を出したんだもの」と打ち明けるかえるくん。ふたりは、とてもしあわせな気持ちで、かたつむりくんが届けてくれるのをずっと待っていた。
がまくんとかえるくんのおはなしはシリーズになっている。『ふたりはともだち』のほかに『ふたりはいっしょ』『ふたりはいつも』『ふたりはきょうも』があって、それぞれに5話ずつ入っている。どれも大事件が起きるわけではなく、日常の暮らしに一喜一憂するがまくんとかえるくんが描かれている。
病気で寝ているかえるくんにお話をせがまれても、ちっとも思いつかないがまくんは逆立ちしたり、水をかぶったりしたりして調子が悪くなり、逆にかえるくんに看病してもらうことになったり。夏の暑い日にふたり分のアイスクリームを買って、かえるくんのもとに急ぐがまくんがアイスまみれになって怪物になってしまったり。
いろんなことが毎日あって、なかなか思うようにいかない。どんなに仲がよくても意見が食い違い、けんかをすることもある。でも、こころの底ではいつも相手を思っている。だから怒ったり、恥ずかしいことをしたり、ありのままで大丈夫。また肩を組み合える――がまくんとかえるくんはそういう仲だ。
がまくんとかえるくんの最初の本『ふたりはともだち』が日本で出版されて五十年になる。それを記念した「アーノルド・ローベル展」が10月23日まで、いわき市立美術館で開かれている。「きみが いてくれて うれしいよ」という言葉とともに、だれかがだれかを思う気持ちが生きる支えになることを、さり気なく伝えている。
特集 LIFE 涸沼川のほとりで 照沼とよ子さんの生き方 |
照沼とよ子さんは91歳。現在は茨城県大洗町で暮らしている。かつていわき市小名浜岡小名にあった割烹「和千荘」はとよ子さんが心血を注いだ店だった。1946年に夫・輝一郎さんが脳溢血で倒れ、とよ子さんが三人の娘を育てながら一家を背負った。最初は旅館「和千荘」、さらに割烹「和千荘」。軌道に乗ったこの店を55歳で夫の親友に譲って、大洗に戻った。とよ子さんの切れ味鋭い短歌とともにその人生を振り返った。
記事 |
がまくんとかえるくんの作者アーノルド・ロベールのこと
いわき市立美術館で10月23日まで開かれている「アーノルド・ロベール展」にちなんで、その54年の生涯を振り返りながら、作品の思いなどを紹介する。
人はそれぞれ違い対等であるべき
いわき市立美術館 竹内啓子さんのはなし
永遠のソール・ライター
郡山市立美術館で写真展「永遠のソール・ライター」が10月23日まで開かれている。ファッション写真家として第一線で活躍したあと、ニューヨークの身近な風景にまなざしを向け、美しいカラー写真を撮り続けた。展覧会を通して、その人生と作品を紹介する。
視点を変えれば世界は違って見える
郡山市立美術館学芸員 永山多貴子さんのはなし
ギャラリー見てある記
「永遠のソール・ライター」展
ありのままに伝える
沼沢忠吉さんのはなし
いわき市平出身の沼沢忠吉さんは京都で「Art Space 寄す処」でアーティスト・イン・レジデンス」などを行ってきた。今回、草野心平と宮澤賢治をテーマとした朗読劇を上演することになった。沼沢さんの思いを紹介する。
メトロノーム 議会が少し動いた
日々の本棚 歌集『土地に呼ばれる』三原由起子著
連載 |
DAY AFTER TOMORROW(236) 日比野 克彦
ALL TOGETHER NOW あなたが箱に入れば、箱は細胞分裂し始める
コラム |
月刊Chronicle 安竜 昌弘
歩く人
車に頼らず街を感じながら自分の足で歩を進めてみる