第494号

494号
2023年9月30日
  床上浸水した白水阿弥陀堂のお堂。周辺は泥を取り除き、砂利を敷き直した 2023.9.25

    台風13号による線状降水帯の発生で

      白水阿弥陀堂も水に浸かる

 

 台風13号による9月8日から9日にかけての大雨で、いわき市は内郷地区など1700あまりの住宅が浸水被害に遭った。局地的な豪雨をもたらす線状降水帯が発生し、河川が氾濫するなどした。内郷白水町の国宝「白水阿弥陀堂」は近くの新川(地元では「白水川」と呼ばれている)が溢れ、参道、それに浄土式庭園や管理事務所など敷地一帯が水に浸かり、お堂も床上2、30㎝ほど浸水した。

 白水阿弥陀堂を管理している願成寺住職の赤土隆行さん(73)によると、8日の夜、「阿弥陀堂が停電になりました」と警備会社から連絡があり、急いで来てみると、すぐ前の駐車場に止めていた愛車の軽トラックが水没し、流される一歩手前だったという。時間は午後10時半ぐらい。急にどっと水が流れてきた。
 4年前の台風19号の2週間後の大雨でも、台風で護岸が崩落した新川の氾濫と、大雨での浄土式庭園の池の増水、その池の排水ポンプの故障で、白水阿弥陀堂の敷地は高さ50㎝ほど水が上がった。しかしその時の経験も集中豪雨的な大雨では生かせるものではない。池のポンプ自体、水没してしまった。96歳になる住職のお父さんも、お堂が床上浸水になるようなことは初めてという。
 白水阿弥陀堂がある辺りは、その昔、人々は山際に家を造って住み、太陽が当たる明るく平たい場所を田畑にした。長い年月の経過のなかで川や道路は高くなり、いつの間にか平安末期に建立された白水阿弥陀堂一帯が一番低い土地になってしまった。国の指定史跡なので敷地の高さは変えられず、それに地形的に山にも囲まれている。
 「根本的に河川をどうにかしない限り、水害は防げないと思う。地震、雷、火事、親父という言葉があるが、親父じゃなくて水害。親父だったら5つぐらいのたんこぶで済むが、水害はすべてなくなってしまう」と、赤土さんは言う。
 さいわい、お堂の仏像はすべて無事だった。25日には文化庁の調査官などが現地を訪れ、御堂や仏像、浄土庭園など被害の状況を調査した。一通り確認したあと、文化財防災専門官の松田淳さんは「国宝としての価値に毀損はない。御堂は床下に泥が混じっているような所はあるが毀損はなく、今後、カビを生やしたり、建物が脆弱になったりしないように予防措置も含めて考えていきたい。仏像にもカビや損傷は見られない。庭園の泥の撤去は急がないと」と説明した。 

 


 海洋放出から1カ月

 トリチウムなどを含む汚染水を海に流し始めてから1カ月が過ぎた。九月二十三日には、福島大学の研究者たちが立ち上げた「復興とは色の両立とALPS処理問題を考える福島円卓会議」の第4回会議が福島市の杉妻会館で開かれ、1回目の放出について、それぞれの立場から現状を説明した。

問題にどう取り組むかを考える時期
福島大学共生システム理工学類教授 柴﨑直明さんのはなし
福島大学食農学類准教授 林薫平さんのはなし

意見
これは賠償できない問題です
青山学院大学名誉教授 本間照光さんのはなし

「食べて応援」は長続きしない
福島漁連理事 柳井孝之さん
相馬市のスーパー 中島孝さん

質疑
ロンドン条約について
トリチウム濃度について
漁連会長の発言

 記事

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