第498号

498号
2023年11月30日

  約束の水曜日、タケルさんが絵を描きに来てくれた

 11月中旬、いわき市四倉町のソノベミチヨさん(48)が「ソノベタケル展」(12月3日まで)の案内を持って編集室を訪れた。タケルさん(21)はミチヨさんの息子さん。2年前に親子展を開いた、いわきアリオス東口ウォールギャラリーで、今度はタケルさんだけの作品展が開催されている。
 親子展ではタケルさんが描いたイワシやスズキ、カジキマグロなど魚の絵を布に転写して刺子にし、手作りのバッグに縫いつけて展示した。タケル展はツタンカーメンやYMO、じゃんがら念仏踊り、草野心平など「人物画」が並べられている。
 案内を見ていたら、タケルさんが描いているところを見たくなり、ミチヨさんにお願いすると、親子で「アートの日」と決めている水曜日にタケルさんを連れて来てくれるという。心平さんを描いたのなら次は弟の天平さんと思い、天平さんと奥さんの梅乃さんの写真が載っている本をミチヨさんに渡した。

 タケルさんは3年前に、いわき支援学校高等部を卒業して、いまは就労支援事業所に通っている。水曜日の「アートの日」は事業所を休んで、親子で美術館や草野心平記念文学館、暮らしの伝承郷などに行って、展覧会を見たり、言葉にふれたり、さまざまな物を眺めたりしている。
 「アートの日」の行動は、タケルさんの絵に反映されている。例えば、ツタンカーメンは美術館で見たエジプト展、草野心平は心平記念館の常設展というように。心平記念館の常設展にある心平の朗読が聴けるコーナーは、タケルさんのお気に入り。なかでも「ごびらっふの独白」が大好きで、家でもその詩の絵本を音読している。

 約束の水曜日、ミチコさんに連れられてタケルさんがやって来た。天平さんと梅乃さんの写真が飾ってある「天平・梅乃ルーム」に案内すると、タケルさんはひとしきり部屋にあるものを1つ1つ興味津々にゆっくり眺めた。
 天平さんのポスターを見つけて同じポーズをするうちに、リュックから鉛筆削りや消しゴム、半紙などを取り出して描き始めた。手元の本の写真と壁のポスター、机に飾ってある写真立てを交互に見て、初めに天平さん、それから梅乃さん。段々のってきたようで、鉛筆を動かしながら歌を口ずさんだ。最後に、サインをするように「草野天平と草野梅乃」と書いた。
 「でき具合はどうですか」と尋ねると、タケルさんは「うまくできました」と笑顔。かわいらしく仕上がった絵に、天平さんと梅乃さんは少し照れているかもしれない。


 特集 ALPS処理水 海洋放出をめぐって

海洋放出が行われて3カ月。3回目の放出を終えた。新地の漁師として発言を続けてきた、小野春雄さんの思いを聞くとともに、「どうなってるの海洋放出?!学習会」に出席した福島県漁連会長、野﨑哲さんのはなしを紹介する。

小野春雄さん
我々が海を守らなかったら誰が守る
海は大きな生きもので人間のものじゃない
100歳現役、廃炉を見届ける

野﨑哲さんのはなし
3世代、100年に関心を持ち続ける
どんな影響を受けるか心配している
1回1回が新たな海洋放出

野﨑さんへの質問

 記事

福島県議会議員選挙が終わった。いわき市選挙区では現職3人が落選の憂き目を見た。また地盤も看板も鞄を持たない京都出身の医師、山口洋太さんがトップにあと一票と迫る得票を獲得した。今回の選挙を振り返るとともに、山口さんから話を聞いた。

メトロノーム 福島県議選
新旧交代の強風が吹いた

福島県議会議員 山口洋太さんのはなし
「いわきの医療をなんとかしたい」の一心で       


J2でのいわきFC
たましいの息吹くサッカーを共有しよう
島貫真




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