第506号

506号
2024年3月31日

まだ現場検証も終わらず
事故から40年でデブリは取り出せない。
百年経っても
福島第一原発の敷地は
放射性廃棄物の巨大な集積場だろう

 東京電力は福島第一原子力発電所の廃炉を、事故から最長40年となる2051年までの完了を目指している。しかし最大の難関とされる核燃料デブリの取り出しをはじめ、ほとんどの工程が遅れていて、計画通りに廃炉を終えられるか不透明な状況にある――事故から13年が経つなか、そういう内容の報道があちこちのメディアでされている。
 京都大学複合原子力科学研究所研究員で、NPO法人いわき放射能市民測定室たらちねにもかかわっている今中哲二さんの講演会(たらちね主催)が3月17日、ラトブ6階のいわき産業創造館で開かれた。
 タイトルは「100年では終わらない原発事故の後始末」。福島第一原発はまだ現場検証すら終わっていず、40年での廃炉は幻のスローガンで、希望の作文・お絵かきに過ぎず、100年経っても福島第一原発の敷地が放射性廃棄物の巨大な集積場であることは間違いない、と今中さんは思っているという。

 講演の内容を「廃炉」に絞ってまとめてみる。
 原発事故から九カ月後に東電が初めて発表した廃炉計画では、事故から10年以内に核燃料デブリを取り出し、20年から25年でデブリの取り出しを終了、そのあと建物も解体して廃炉を終える、と書かれている。発表から数年後に計画を読んだ今中さんは「計画には3つの課題がある」と思った。
 1つ目は使用済み燃料プールからの核燃料の取り出し。2つ目は核燃料デブリの取り出し。3つ目は原子炉施設の解体とその後の後始末。このなかで、使用済み燃料プールからの核燃料の取り出しは先が見えている。でも現場検証すら終わっていず、溶け落ちた880トンと言われている核燃料デブリがどういう状態にあるのかもわからない、というのが実情だ。
 2020年には2号機と3号機で、原子炉建屋の最上階の床に据え付けられているシールドプラグという、原子炉格納容器の真上の鉄筋コンクリート製のふたのような部分に、大変な量の放射性物質が付着していることがわかった。その2年後には、1号機の原子炉を支える鉄筋コンクリート製の円筒形の土台の「ペデスタル」の鉄筋が剥き出しになっているのが見つかり、地震が起きた時に耐えられるかどうか問題になっている。
 結局、事故から13年経っても、現場検証の道半ばで、原子炉本体の検証はこれから。その状況が明らかになって始めて、核燃料デブリが取り出せるかどうかの判断になる。もちろん取り出す方法も暗中模索の状態で、事故から3、40年で取り出せるとは思えない、と今中さんは説明する。
 「仮に50年、100年かかって核燃料デブリが取り出せたとして、それをどこへ持って行くのか。福島第一原発しかないだろう。建物そのものはどうする、という問題も出てくる。(事故を起こした原発が)3基もあって、チェルノブイリより後始末が大変」と。
 それでも2011年暮れに、東電は「今後、30年から40年以内にデブリの取り出しを完了させる」と言ってしまったから、最長40年で廃炉を完了することを引っ込められずにいて、計画の改定だけを繰り返している。だから、100百年経っても福島第一原発の敷地は放射能廃棄物の集積場であることは間違いない、という。


 特集 3.11 川前・下桶売りからの報告

川前地区は年々人口が減り、この3月には小、中学校がすべては以降になった。志田名を中心に高齢化と過疎化が押し寄せている下桶売りの現状を取材した。

住民が減り、学校も閉校した
大越キヨ子さんのはなし

いつのまにか「過疎」が足元に
大越アサこさんのはなし

猫と草むしり
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「小さな拠点 おおか」のこと
みんなが集まり、元気と笑顔が溢れる場所にしていきたい
高齢化率53%の川前地区で始まった、みんなが元気になるための試み。

大越キヨ子さんと母のフク子さん
 記事

今中哲二講演会

100年、200年を見据えた計画が必要
京都大学複合原子力化学研究所研究員で、NPO法人いわき放射能測定室たらちねにもかかわっている今中哲二さんが3月17日にいわき産業創造館で講演を行い、廃炉、海洋放出、放射能汚染の環境基準設定の必要性などにふれた。


宇都宮市の取り組み
 
拠点をつくって公共交通でつなぐ
宇都宮市と芳賀町を結ぶライトレールが昨年8月に開通した。全国初のすべて新設。ライトレールに試乗し宇都宮市のまちづくりを取材した。

 

 


デクラーク フィービーさんのはなし


いわきで過ごしたこの1年
第二の故郷で自分を見つめる
声楽家のデクラーク フィービーさんがワーキング・ホリデーを利用して、昨年春からいわきに滞在している。4月下旬のオーストラリアへの帰国を前に、この1年について聞いた。


追悼 村岡寛さん 3月5日死去 76歳


青春の焔燃やした友よ
劇作家・演出家 高木 達


日々の本棚
『もしもねこが そらをとべたら』
絵・黒田征太郎
文・西島三重子
NHK出版



 連載

阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(99)クログワイ

木漏れ日随想(15)佐藤 晟雄
水戸の梅


 コラム

刊Chronicle 安竜 昌弘

好きを深める 

新しいことを書くと古びてしまうけれども
最初から過去を書けば古びない(川本三郎)